第19夜 田舎道
通い慣れたはずの道のはず、曲がり角を曲がると急に見知らぬ田んぼ道を歩いていた。
ここはどこなのだろう、道を間違ったのだろうか、そんなことを思いながら、しばらく歩いた。
もし曲がる場所を間違えたのならば…そうは思うのだが、左右を見回しても道路は見当たらず、荒れたような田んぼが広がるばかり、どう考えても先ほどまで歩いていた国道とは景観が違い過ぎる。
戻ろうかと後ろを振り返ると、自分がどうやってここまで歩いたのかすら解らなくなるほどの山道。
地元の人だろうか、喪服姿の老人が集団で1列になって私のすぐ横を歩いている。
「すいません、道を聞きたいのですが?」
声を掛けても誰も私の方を振り向かない。
私のことを無視しているかのように、通り過ぎていく。
「誰か道を教えてください」
近づいて、一人の老婆の前に立つ。
「国道に出たいのですが?」
老婆はまったく関係のないことをブツブツと話し出す。
何を話していたのかは覚えていない。
木の陰から、学生服の子供たちがヒソヒソと話している。
私の方を見て、バカにするようにニヤニヤと笑っている。
隣を歩いている老人たちが私に一言、一言、声を掛けている。
「今日は葬式だ」
「あれは松の木だ」
まったく関係の無い、聞いてもいないことを勝手にしゃべっては、そのまま歩いて行く。
その様子を子供たちが笑って見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます