第19夜 田舎道

 通い慣れたはずの道のはず、曲がり角を曲がると急に見知らぬ田んぼ道を歩いていた。

 ここはどこなのだろう、道を間違ったのだろうか、そんなことを思いながら、しばらく歩いた。

 もし曲がる場所を間違えたのならば…そうは思うのだが、左右を見回しても道路は見当たらず、荒れたような田んぼが広がるばかり、どう考えても先ほどまで歩いていた国道とは景観が違い過ぎる。

 戻ろうかと後ろを振り返ると、自分がどうやってここまで歩いたのかすら解らなくなるほどの山道。

 地元の人だろうか、喪服姿の老人が集団で1列になって私のすぐ横を歩いている。

「すいません、道を聞きたいのですが?」

 声を掛けても誰も私の方を振り向かない。

 私のことを無視しているかのように、通り過ぎていく。

「誰か道を教えてください」

 近づいて、一人の老婆の前に立つ。

「国道に出たいのですが?」

 老婆はまったく関係のないことをブツブツと話し出す。

 何を話していたのかは覚えていない。

 木の陰から、学生服の子供たちがヒソヒソと話している。

 私の方を見て、バカにするようにニヤニヤと笑っている。


 隣を歩いている老人たちが私に一言、一言、声を掛けている。

「今日は葬式だ」

「あれは松の木だ」

 まったく関係の無い、聞いてもいないことを勝手にしゃべっては、そのまま歩いて行く。

 その様子を子供たちが笑って見ていた。

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