第18夜 丘の上

 小高い丘の上を目指して歩いていた。

 高校の時の同級生が、つまらないことを私に楽しそうに話している。

 私は彼と、ここまで一緒に歩いてきたらしい。

「アイツ、かっこつけて、こんなポーズで挨拶してくるんだぜ」

 少しおどけた様にアイツの真似をする同級生。

 私は、丘の上にある小屋で何かを食べたかった。

 丘の上には数10人の登山者が思い思いに過ごしている。

 私は、何か食べたかったのだが、小屋の中にある蕎麦やうどんの自動販売機は使えないようだった。

 丘の上には店もあるのだが、まだ朝早いせいか開店している様子は無い。

 同級生は相変わらず、なにか話しかけているのだが、私は何か食べたいと思うだけでまったく相手にしていなかった。


 皆、一様に店が開くのを待っている様子だった。

 時間が過ぎていくにつれ、人が増えてくる。

 私は、こんなに人がいたのでは、自分の分が買えないのではないか?と不安になり小屋に並ぼうと歩くのだが、一向に小屋に辿りつかない。

 アソコには自動販売機がある。

 行ってもいないのにそれだけは解る。

 遠目ではあるが、小屋から出てくる人は何かを持っている。

 売り切れてしまう…早く行かないと。

 どうして、同級生は焦らないんだろう。

 コイツが焦らないから私は小屋に辿りつけないのだと、私は同級生から離れようと走りだすのだが、彼はいつまでも隣で話しかけてくるのだ。

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