第17夜 ドア

 3人の外国人の少年と遊んでいた。

 地面につま先で円を描くと、円の中だけぬかるんだり、底なしの穴が空いたりする。

 面白がって、その穴に片足を突っ込んだりしていた。

 1人が大きな円を描き、もう1人を円の中に突き飛ばした。

 円の中で地面は割れ、底なしの闇へガラガラと吸い込まれる様に消えていく。

 そうして1人は消えた。

 別の誰かが、さらに大きな円を描いた。

 同じように地面は割れ、私は辛うじて円の外へ逃げることができた。

 円の外から2人が吸い込まれていく様子を見ていた。

 それは絶望的な光景だった。

 残された底なしの闇に、青緑に光る橋が掛かった。

 吸いこまれた3人は自転車に乗って橋を渡って行く。

 無事だったのかの安心すると、身体がフワリと浮いて私も橋の上にゆっくりと降ろされた。

「なんで来たんだ、早く行かないと」

 1人の少年に急かされて、橋の向こうにあるドアに入れと背中を押される。

「70秒で次の扉の向こうへ行かないと」

 私が扉を開けると、少年たちは次々と走り込んでくる。

 最後の一人が扉を閉めると同時に橋がガラガラと崩れた。

「すぐに次の扉を探さないと」

 少年たちは散り散りに扉を探しては、飛び込んでいく、幾度も、幾度もソレを繰り返す。

 私も必死に扉を探した。

 部屋を進むたびに扉は見つけにくくなっていく。

 壁紙に隠されていたり、ベッドの下にあったり、70秒という時間は余りに短く思えた。

 私達は最初は協力していたのだが、時間が過ぎるにつれて競争のように相手を出し抜こうと必死になっていた。

 辿り着いた部屋は扉が見つからず、部屋の奥からスッ…スッと消えていく。

 目の前で見つけた扉に手を伸ばすと、少年に突き飛ばされた。

 少年はその扉に入ろうとしたのだが、その扉は壁に書かれた絵だった。

「ざまあみろ」と私は笑い、他の扉を探す。

 とても届かないようなところに扉を見つけた。

 かならず何かで届くはずだと辺りを見回す。

 色の違う壁を押すとトランポリンがバタンと表れた。

 私はトランポリンに乗って扉の向こうへ逃れる。

 もうひとり少年が私の後に続いた。

 身体を半分扉に突っ込んだところで、私に手を差し伸べてきた。

「引っ張ってくれ」

 私は、その手を払って、次の扉を探す。

 私の後ろの少年がどうなったのか?


 私に考える余裕はなかった。

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