第4夜 腐ったおでん

 駐車場にいた。

 昔、務めていた酒屋の駐車場。

 夜の駐車場で、おでん屋の屋台を引いていた。

 営業しなければならないのだが、電源コードが足りない。

 届かないのだ。

 客は来ているのだが、電気が来なくて営業できない。


 お金が無いのに…稼がなければならないのに…。

 電話が鳴った。

 昔、務めていた会社のシステム担当からだった。

「桜雪さん、いつ会社に戻るんですか?」

「いや…戻れるわけないでしょ」

「〇〇さんから電話いってないんですか?すぐ、復職してほしいと伝える様に言いつかっているはずですが」

「いや…それはこないですよ、私は皆から嫌われてましたから…誰も私の復職なんて望んでませんよ…だから私は今、こうしているのですから…もう放っておいてください、お願いします」

 電話を切ると、大きな外車が駐車場から出て行った。

(あぁ…あの人はもう来てくれないな…電気が無いばっかりに…今日も何も出来なかった)

 灯りの無い屋台では冷えたおでんが腐っていた。

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