第3夜 砂浜

 海の向こうで巨神が争っている。

 9体の巨神は3対6へ別れ、激しく争っていた。

 きっと見ている海は、子供の頃に祖父が経営していた浜茶屋があった海。

 朽ちた浜茶屋に腰かけて私は、その様子を眺めている。

 怖いとは思わず、ただ大きなシルエットが近づいてくるたびに波がうねり、世界は終わるのだと実感していた。

 後ろの方では海岸から離れようと皆が列をなして逃げていく。

 皆怖いんだなと思い、それを愚かな事と感じていた。

 抗うことを諦めた私は、その波に飲まれ死んでいくのだと思うと、最後までその光景を眺めていられることを喜びと感じていた。

(あんな間近で神を見られるのに、なぜ背を向けて逃げていくのか?)

 私にはソレが解らない。

 そもそも何処へ逃げていくのか?


 神に抗う悪魔が私に気付き笑った。

 1人で3人を相手に劣勢なのに…その悪魔は笑っていた。

(愉しんだろうな)

 絶対の者に逆らう、そんな黒い悪魔と死ねるなら…。

 そんな風に思い、立ち上がり海へ歩き出していた。


 海水は冷たく、波は激しく、でも私はソコへ向かって歩き出していた。


 砂浜で誰かが呼んだ気がしたが、もう浜辺には戻れないと知っていた。

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