第8話「生と死」
「さっき、一緒にいた子がアイリスという方ですか?」
「そうです。それがどうかしたんですか?」
「いや、なかなか可愛らしい感じの子だなぁと思いまして...」
「ノーマンって誰に対しても可愛いっていいますよね...」
マリーは少し引き気味の顔でノーマンを見た。
「酒場に着きましたね」
ーガチャー
マリーとノーマンは待ち合わせの酒場に着いた。
「ノーマンとマリーが来ました」
「マリー、ノーマン!こっちよ!」
酒場に入ってすぐにギルドリーダーのラメルがこっちに気付いて私たちを席に呼んでくれた。
「よし、これで全員集まったわね。じゃあ早速だけど明日のクエストについて説明する」
マリーが達が所属しているギルドの人数は全員4人。ラメル、マリー、ノーマン、ナターシャ。ちなみにノーマン以外は女性だ。
「はい、お願いします」
「明日私たちが受けるクエストは‘'ネプトゥルム洞窟・最深部‘’の調査だ。まぁ、簡単に言うと最深部に生息している魔物の生態調査だ」
「ラメルさん、そのクエストちょっと簡単すぎじゃないですか?」
「ノーマン...君は何も分かってないね。生態調査というのは普通の討伐クエストより難易度が高いんだ。だから、舐めて挑んだら命を落とすことになるよ」
「そうですよ、ノーマン」
「はい、すいませんでした。次から言葉を選んで発言します」
「ところでラメルさん、ネプトゥルム洞窟・最深部にはどのようなモンスターがいるのですか?」
「私もあの洞窟については詳しくはわからないんだ、だからその質問には答えられない」
「そうですか…」
「だが、今回行くクエストはオークの生態調査だからオークがいるということは確かだ」
「オーク?」
「でもオークって魔物の中では弱い分類に含まれるから大した相手ではないのでは?」
とノーマンが言った。
「いや、それがそうでもないんだ。普通の魔物は一体か二体で行動するのだが奴らは集団で行動するんだ。だから一体の強さが大したことなくてもそれが10体になって襲われたら万事休すだ」
「てことはオークに遭遇しても無理に戦闘をしようとしてはダメということですね」
とマリーは言った
「つまりそういうことだ。まぁ、生態調査だから戦闘にはならないと思うがな」
するとラメルの横に座っていたナターシャが口を開いた。
「もし、戦闘になったらどうするのですか?」
「その時は逃げるか死ぬかの二択だな」
「それで囲まれてしまったら...」
「ナターシャ少し心配しすぎだぞ?少しは私を信用してくれ」
「そうですよ!ナターシャ!ラメルさんはお強いですから」
この時マリーはなぜか嫌な予感がし身震いしていた。
「はい」
ナターシャはラメルの一言で納得し、頷く。
「よし、明日についての話は以上だ。何か質問あるか?」
三人は口を揃えて「ないです」と言った。
「よし、解散だ。明日の集合場所はベレンの正門に集合だ」
「はい!」
「了解しました!」
「ではまた明日」
そしてラメルとナターシャは酒場を去っていた。
「マリー、これからどうするんですか?」
「私は自分の家に戻って明日の準備をします。」
「分かりました!また明日!」
「はい。おやすみなさい」
ノーマンも酒場を去り、マリーも自分の家に帰って行った。
そして時が流れ周りが明るくなり朝日が昇ってきた。
ー翌朝ー
ベレン・正門前
「揃ったな」
正門の前にはラメル、マリー、ノーマン、ナターシャが集まっていた。
「それではこれから生態調査のクエストでネプトゥルム洞窟に向かう」
「はい!」
そしてマリー達はオークの生態調査をするためにネプトゥルム洞窟に向かった。
ここで余談だがマリーたちのジョブを紹介しておこう。
マリー ジョブ:剣士
ラメル ジョブ:剣士
ノーマン ジョブ:剣士
ナターシャ ジョブ:魔術師
普通のパーティの組み合わせは前衛に二人、後衛に二人などというバランスの取れた形にする。だがこのパーティでは前衛が三人、後衛が一人でバランス型というより攻撃型だ。まぁ、パーティの組み合わせは自由なんだがな。
余談はさておき本編に戻ろう。
ネプトゥルム洞窟に到着した。
「すげえ...」
「ノーマン行くぞ!」
「みんな行くの早くないですか...」
ノーマンはネプトゥルム洞窟の迫力に圧倒され思わず声が出てしまったが、ラメルたちは何もしゃべらずに洞窟に入って行った。
「ノーマン。あなたは本当に緊張感がないですね」
とマリーがピリピリした感じでノーマンに言った。
「でも逆に気を張りすぎても良くないと思いますよ~」
とノーマンはマリーに皮肉を言った。
「ノーマン少し黙って」
するといつもクエスト中は口を開かないナターシャが怒り気味でノーマンに言った。
「はいはい」
この会話からマリー達は一言も発さずに最深部まで歩み続けた。
ーネプトゥルム洞窟・最深部ー
「ラメルさん..なんか急に空気が重くなって、寒気がするのですが…もしかしてここが最深部…ですか?」
「間違いない、最深部だ」
マリーは空気の変化を感じ取り、ラメルに報告した。そしてマリーが言うようにここはネプトゥルム洞窟の最深部だということが分かった。
最深部の雰囲気は上層とは全く違い、ピリピリとした空気が漂っている。
「マリー、ノーマン、ナターシャ、ここからは慎重かつ隠密に進むよ。どこに敵の群れが潜んでいるか分からないからね」
「分かりました」
そう言いながらラメルたちは最深部へ歩き始めた。
「それにしても暗いですね…」
とマリーが言うと横で一緒に歩いていたナターシャがその言葉に応じて魔法を唱えた。
「マリー、任せて。‘’明瞭たる光よ、闇夜を照らせ‘’ライト」
ナターシャがライトという魔法を唱えてくれたおかげで辺りが明るくなった。
光属魔法‘’ライト(光明)とは…明かりを灯す魔法。手のひら程度の大きさの光の玉が出現する。
「ありがとうございます、ナターシャ」
「こんなことでわざわざ礼を言わなくてもいいよ。さぁ、進みましょう」
「はい!」
「だいぶ、明るくなったな。よし、‘’ライト‘’の効果が消える前に進めるところまで進んでしまおう」
とラメルが言う。
そしてマリー達は歩みを止めないで奥へ奥へと進み続けた。
すると歩いている道中にノーマンが何かを指をさし言う。
「あれは、何でしょうか...」
「どうした?ノーマン...これは...牢屋か?」
ノーマンが指をさしている方向を見るとそこには牢屋みたいなものが5カ所くらいあった。
人間が作ったような綺麗な感じではなくどちらかというと雑な感じで作られた牢屋だ。岩を削ってその部分に強引にい鉄格子を取り付けた感じだ。
「牢屋?何でこんなところに牢屋があるのでしょう...」
とノーマンは言う。
するとマリーは急に走り出し牢屋に近づき、中を確認した。
「ラメルさん!!牢屋の中に人がいます!」
マリーは牢屋の中を確認するとそこには5人の人間がいて、身ぐるみを剥がされた状態で横たわっていた。
5人中4人は男性、残りの一人は女性だった。
「マリー!急に走り出すなんて危険すぎます!あなたは死にたいのですか!」
慌てた感じでラメルたちが私の元へ駆けつけナターシャが言った。
「すいません」
ラメルは牢屋の中にいる人たちに向かって安否を確認した
「おい!大丈夫か?」
すると、ラメルの声に気が付いたのか女の子らしき人物が弱弱しい声で
「助けて…助けて…」
と言ってきた。女の子以外の男性は息を引き取っていた
「ラメルさん!!この子生きていますよ!」
とノーマンが言う。
「分かっている。この子は私に任せて、ノーマン達は他の牢屋を調べてくれ。まだ捕らわれている人たちがいるかもしれない」
「分かりました」
ノーマン、マリー、ナターシャの三人はラメルに言われた通りに他の牢屋を調べに行った。
「ちゃんと施錠されているのか。仕方ない、強引に開けるか」
そしてラメルは少女が捕らわれている牢屋の鍵を自分の剣でぶち壊した。
鍵と剣がこすれる音は洞窟中に響き渡った。
「よし、開いた開いた」
ラメルは捕らわれている少女をお姫様抱っこのように抱きかかえた。
少女の体はあざだらけでひどい状態だった。
「これは、酷いな」
そしてマリー達は牢屋を確認したがたが生きている人はいなかった
「ラメルさん…残念ながら生きている人は見当たりませんでした」
とマリーはラメルに報告した。
「そうか…それは残念ね」
「はい。その子だけでも助け出してあげましょう」
「もちろんそのつもりだ。生態調査のクエストは放棄することになるが今はそれどころではない。だから、これよりベレンに帰還する」
「分かりました」
ラメルたちは女の子を助けることを第一目的にし、生態調査クエストは放棄した。
「敵に遭遇する前にこの洞窟を出ましょう」
とナターシャが言った
ラメルたちは出口へと歩き始めた。
すると次の瞬間、何者かによって矢が放れた。
その矢はマリー目掛けて放たれていた。
「マリー!!!危ない!」
「キャ!!」
ノーマンは矢が飛んで来てることに気付きマリーを守るために突き飛ばし、代わりに矢を受けてしまった。
「ンッ!!グハッ!」
矢は腹の中心部分に刺さり、ノーマンは腹から大量の出血をしていた。
そして突き飛ばされたマリーは衝撃で尻もちを突いていた。
「ノーマン!!!!無事か!!!」
「は、はい。何とか、、、、ゲホッ!」
ラメルがノーマンに問いかけたが全く無事ではなかった。
腹から大量の血が出てき、吐血を繰り返し、額には尋常じゃない量の汗が流れていた。
「まずいな。ナターシャ!止血できる魔法はあるか?」
「止血はできませんが一部を再生させる魔法は使えます!」
「それで十分だ。ナターシャそれを頼めるか」
「やってみます。命の鼓動よ、躍れ・・・・」
ナターシャは何故か詠唱をやめ、杖を落とし棒立ちになり、一点を見つめていた。
「ナターシャ、どうした!!」
「ラメルさん、私たちはもう生きて帰れませんね・・・」
ナターシャが見たのはオークの群れだった。
軽く30体近くはその場にいた。
ナターシャは戦意喪失しその場に膝を落とした。
「ら、ラメルさん!!!どうするんですか!!あんなにオークがいたら勝ち目はありませんよ!」
マリーは恐怖のあまり乱れていた。
「ラメルさん・・・」
「みんな、本当にすまない」
ラメルはそういって腰についていたナイフで自分の首を切り自害した。
「ラメルさん…ラメルさん…なんで…私たちを置いて…」
「なんでだよ、ラメルさん、俺たちを置いていかないでくれよ…ンぐっ!」
ノーマンは後ろから近寄ってきていたオークに心臓を剣で貫かれていた。
<<オトコハモウヨウズミダ>>
「ノーマン!!!」
そしてマリーとナターシャはオークに頭を軽く殴られ気絶し、捕らわれてしまった。
RPGってレベルさえ上げればクリアできるんじゃなかったっけ? 単純 @Kobayakawa1121
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