第7話「マリーの過去 後編」
ヴェール達はマドックの森に着いた。
ーマドックの森 入り口ー
「よし、目的の場所に着いたな。ここからは未知の領域だから、慎重に行こう」
「おう」
「はい」
ちなみにヴェールのジョブは春人と同じの剣士、アロワはランサー、そしてマルタはプリースト。
※ランサーとは・・・ランス(槍・やり)を装備した騎兵のこと。
※プリーストとは・・・味方の傷を回復し、強化できる魔法を持っていて、サポートに特化している。
ヴェール達は森の中へ足を踏み入れた。
次の瞬間、森の奥の方から憤激の雄叫びが聞こえてきた。
「ッ!?今のは何ですか?」
「アロワ、マルタ!今すぐ武器を取り出し戦闘の準備をしろ!」
「分かりました!」
「分かった!」
アロワは槍を構え、マルタは杖を構えた。
そして、ヴェール達は雄叫びが聞こえてきた方向みた。
「あれが俺たちのターゲット...サイクロプス」
そこには、大きな体で地響きを立てながら歩くサイクロプス(一体)の姿があった。
「こ、こんなデカいやつを5体だと・・・・」
「ヴェール!!あんな奴らを5体倒すなんてやっぱり無理ですよ!!!」
アロワとマルタは恐怖のあまり体が固まっていた。
「アロワ、マルタ!!怯んではダメだ!来るぞ!!!!!」
するとサイクロプスはアロワめがけて走っきた。
「アロワ!!!避けろ!!」
「⁉︎」
アロワは真正面から突っ込んでくるサイクロプスの突進を回避した。
サイクロプスはあまり動きは早くない、むしろ遅い。そのおかげでアロワは回避することができたのだ。
「あぶねぇ......」
「大丈夫か!アロワ!!」
「俺は大丈夫だ」
そしてサイクロプスはアロワに突進を避けられて苛立ったのか、再び叫び声をあげた。
「鼓膜が..」
ヴェール達は耳を抑えた。
サイクロプスの叫び声は鼓膜が破れそうになるくらい、大きな声だった。
「うるせえんだよ!!!デカブツ!!!!」
アロワはサイクロプスの声に苛立ち、一人で突っ込んでいってしまった。
「おい!アロワ!よせ!!!!」
アロワは勢いに身を任せ自分が持っている細い槍をサイクロプスの顔面めがけて投げた
「くたばれえええ!!」
そしてアロワが投げた槍は見事にサイクロプスの脳天をぶち抜いた。
サイクロプスは倒れ、消滅した。
ーシュイーンー
「や、やってやったぞ!ヴェール!倒したぞ!」
「‥・」
「アロワ....なんで一人で勝手に突っ込んでいちゃんですか....下手したら死んでいたかもしれないんですよ!」
「うるせえよマルタ。倒せばいいんだよ倒せば!しかもお前びびって何もできてなかっよなぁ?俺がこいつを倒してなかったらお前は死んでいたかもしれないんだぞ?」
アロワは気が狂ったかのようにマルタに向かって言った。
アロワはこんな事を言う奴ではない。多分、サイクロプスへの恐怖心で精神がやられこういう事を言っているのだろう。
「やめろ、アロワ...」
「そ、それは..」
「何も言い返せてねえじゃねえか!マルタさんよ!」
「少し黙れ!アロワ!!!!」
いつも静かで優しいヴェールがでかい声でアロワに言った。
「す、すまん」
「一旦お前は頭を冷やせ。そしてマルタ、こいつが言ってたことは気にしなくていいからな」
すると、周りからまた複数の足音が聞こえてきた。
その足音はさっきサイクロプスが歩いてきた時と同じものだった。
足音から察するに一体だけではない....3、4体?いや、6、7体。
「ッ⁉︎なんだ?」
「この足音.....って...」
「おいおいおいおい。またサイクロプスが来たわけじゃないよな?」
しかし、アロワが言ったことは的中し、複数の足音の正体はサイクロプス8体だった。
サイクロプスはヴェール達に近づいてくる。
「なんで、こんなにサイクロプスが.....
「アロワ、マルタ!ひとまず撤退するぞ!」
ヴェールたちはサイクロプスから逃げるため森の入り口へ走る.....だがそれはもう遅かった。
なぜならヴェールたちはサイクロプス8体に入り口を塞がれ、囲まれていたからだ。
その状況は袋の中のネズミ状態だった。
「か、囲まれた.....なんでこんなに大量のサイクロプスがいるんですか.....」
「多分..さっき倒したサイクロプスの叫び声だ...あれは俺たちを威嚇するわけじゃない、仲間を呼ぶためだったんだ」
「ヴェール!!!!これどうするんだよ!!!!逃げ場がなくなったぞ!!!!!」
「.......」
「ヴェール!!!!!黙らないでよ!!!!!」
ヴェールはこの絶望的な状況に絶望し、戦意喪失していた。
剣を落とし、その場に佇んていた。
次の瞬間、背後にいたサイクロプス2体がアロワとマルタを大きな手で掴んでいた。
「ッ!グハッ!や、やめろ!!!!は、離せ!!
「ッッ!!い、痛いッ!離して!!!ヴェール!!たす....けて!」
サイクロプス達はアロワとマルタを強く握っていた。
「.......」
マルタの助けを呼ぶ声はヴェールには届かなかった。
ヴェールはただ見ているだけで助けようとしなかった。
「ヴェール!!!!助け....」
アロワはヴェールに助けを求めようとした瞬間、サイクロプスは掴んでいるアロワを地面に思い切り叩きつけていた。
「ッッ!!や、やめ.....」
サイクロプスは叩きつけた後、すぐにアロワを踏み潰した。
「アロワァァァァ!!!!!!!」
マルタは泣き叫びながら言った。
「あ......あ....アロ.....ワ..」
ヴェールは崩れ落ち表情がない状態で涙だけを流していた。
マルタを掴んでいるサイクロプスはマルタを息ができなくなるくらい強く握った。
「ンンッッ!息...が.....でき.. ま....だ...死に....ヴェ....ル」
マルタはサイクロプスに窒息させられ意識がなくなった。
「........」
ヴェールはもう涙を流すだけで戦う気力などなかった。
サイクロプス一体がヴェールに近づいてきて太い腕を振りかざした。
ドンッ!という音とともにヴェールはサイクロプスの腕の下敷きになっていた。
「ッ!」
(マリー、約束を守れなくてごめんな)
そして、ヴェール達のギルドが壊滅した。
そのころマリーの家では
ー夕方ー
「ばあば....」
マリーは父親が帰られているかどうかを確認するため、二回から降りてきてばあばに確認した。
ばあばはキッチンで夜食を作っている。
「どうしたの?マリー」
「お父様は帰られてないですよね…?」
「ヴェールは‘’まだ‘’帰ってきてないわねぇ」…」
「そうですか…」
「あ!」
ばあばは何かを思い出したかのように突然声を挙げた。
「ど、どうしたんですか?ばあば!」
マリーはその声にびっくりして慌てた表情でばあばに声をかけた。
「うわっ!ど、どうしたんですか!」
「香辛料を買うのを忘れた...」
「あ、香辛料を買い忘れただけなんですね..それなら私が買いに行ってきますよ!」
「いいのかい?じゃあ行ってきてもらおうかしら」
「はい!」
ばあばはマリーにお金を挙げ、香辛料を買ってきてもらうことにした。
「では、ばあば行ってきます!」
「気を付けるんだよ!」
「はい、では…」
マリーは頼まれたものを購入するため街のお店へ向かった。
(私が帰るころにはきっとお父様が仕事から帰ってきてるはずです)
ここからお店まではあるいて5分くらいで着くことができ、そんなに遠くはない。
そして、ちょうど5分後…
ーベレン・市場通り前ー
マリーは市場通りに着き、ばあば行きつけのお店で香辛料を購入した。
「ご購入ありがとうございました」
「はい、こちらこそありがとうございます!」
(これであとは家に帰るだけですね)
マリーは頼まれた香辛料を購入することができたので自分の家に帰宅しようとした。
すると、横で話していた冒険者の会話が耳に入ってきた。
(今日の任務でどっかのギルドが壊滅したらしいよ?)
(それ知ってる!確か、上位ギルドに所属していた人たちだったよね?)
(そうそう!話によるとサイクロプスとかいう化け物にやられたとか..)
(マジかよ。ちなみにやられた人の名前は?)
(確か、ヴェーる???っていう名前の人だったと思うぞ)
マリーはその名前を聞いた瞬間、驚愕した。
「そんな....お父様.....」
マリーはこのことを受け止められずに、涙を流しながら、走って自分の家へ向かった。
(あの人たちの言ってることは絶対に嘘です。家に帰ればお父様が待ってくれているはず!ハァハァ...)
マリーは息を切らしながら家へと走り続けた。
そして、家に着いた。
「ばあば!!!!!!」
マリーは玄関のドアを勢いよく開け、ばあばがいるキッチンへ向かった。
「マリー!そんなに慌ててどうしたの?」」
「お父様はもう帰って来てますよね!!!!!!」
マリーは必死になってばあばに父親が帰宅しているかどうかを確認した。
「マリー!少し落ち着きなさい....あ、ちょっとどこに行くの!」
マリーは父親が帰宅したかどうか確認するため家にある部屋中を確認して廻った。
(お父様は帰ってきてるはずです...絶対に)
ーヴェールの寝室-
「お父様!!いらっしゃいますか!!!!」
部屋中を確認したが父親の姿はなかった。
そしてマリーは自分の部屋に戻り鍵を閉め、自分のベッドに座り込んだ。
(嘘でしょ......さっきの人達の話は本当なのですか.....お父様が本当に....)
マリーは無表情のままベッドの上で涙だけを流していた。
-コンコン!-
「マリー、入ってもいいかい?」
「ばあば...いいですよ...」
ばあばは泣いているマリーに寄り添って言葉をかけた。
「マリー、なにか嫌な事でもあったのかい??」
「ばあば....お父様が.....」
「ヴェールがどうかしたの?」
「お父様が...死んでしまったかもしれません...」
ばあばはその言葉を聞くとなぜかマリーを抱きしめた。
「マリー.....大丈夫だよ...ヴェールはちゃんと帰ってくるから。きっと、仕事が忙しいから帰るのが遅くなるんだよ.」
ばあばはマリーに伝えてないがヴェールが冒険者で今日の仕事の内容のことも全部知っていた。
なぜばあばがこの事を知っているかというと
昨日の夜にばあばへ直接伝えていたからだ。
「でも....さっき!聞いちゃったんです...ヴェールという人物が任務で亡くなったという話を...」
「マリー...」
するとドアをノックする音が聞こえてきた
ーコンコン-
「すいませーん!お手紙をお届けに来たのですが!」
「はい!今行きますね」
ばあばは手紙を貰うための玄関へ向かった。
ーガチャー
「これはクエスト受付所からのお手紙になります!」
「ありがとうございます」
「では..私はこれで」
「お疲れ様です」
その手紙はクエスト受付所からのものだった。
「ばあば、誰からのお手紙ですか?」
マリーは手紙が気になり自分の部屋からで出てきていた。
「これはクエスト受付所からだねぇ...」
ばあばは嫌な予感がして変な汗が出てきた
「クエスト受付所??」
そして、ばあばとマリーは手紙の内容を確認した。
「!!」
そこに書かれていたのはヴェールの死亡届だった。
ークエスト管理人ー
ヴェール・トリステン
アロワ・パステード
マルタ・アントネラ
上記の三名がマドックの森でサイクロプスに襲われ死亡。
心よりご冥福申し上げます。
それを見てしまったマリーは一気に体の力が抜け床に座ってしまった。
「なんでお父様が化け物に殺されなきゃダメなんですか.........なんで......」
私の感情は悲しみというよりお父様を殺したサイクロプスへの怒りだった。
私はサイクロプスへの感情は殺意しかなかった。
そして現在
ーカフェにてー
「....そして私はお父様の仇を取るために冒険者になったのです。ごめんなさいアイリス。少し話が長くなってしまい.....」
するとアイリスはマリーの手にそっと自分の手を乗せいった。
「アイリス??」
「マリー...こんな辛い話を思い出させるような質問をして本当にごめんなさい.....」
「アイリスは謝らなくていいですよ!この話はいつかアイリスに伝えようと思っていましたから。だから気にしないでアイリス」
「はい.....」
「さ、さぁハーブティーも来ましたし飲みましょう!」
「はい.....いただきます.....」
アイリスとマリーはハーブティーを飲んだ。
「美味しいですね!ここのハーブティー!」
「はい、とても美味しいです!!」
そしてアイリスとマリーはハーブティーを飲み店を出た。
(ありがとうございました。またご来店くださいませ!)
「アイリス、街を少し散歩しませんか?」
「いいですよ!」
すると、後ろの方から男の人の声が走ってきてマリーに声をかけた。
「おーい!マリー!!!」
「???」
マリーは後ろを振り向き誰に声をかけられたのか確認した。
「ハァハァ...ここにいたのか...」
声をかけてきた人はマリーと同じギルドに所属しているノーマンという人物だった。
「ノーマン!いきなり走ってきてどうしたんですか?」
「明日のクエストについて話したいことがあるからマリーを呼んでこいとリーダーに言われてですね....」
「それは、今じゃなきゃダメなんでしょうか?」
「はい...すいません」
「分かりました....今すぐ行きます」
「助かります!」
「アイリス.....本当にごめんなさい...散歩ができなくなってしまいました....」
マリーは悲しげな表情を浮かべて言った。
「マリー、全然大丈夫ですよ!散歩ならいつでもできますし!」
「ありがとうございます...アイリス...」
「じゃあ、お仕事頑張ってくださいね!」
「はい、行ってきます!」
そしてマリーはアイリスと別れ、ノーマンと共にギルドのリーダーが待っている酒場へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます