第3話
セントラル・パークに着いた。
僕は、青々と茂った芝生に、多少の気も払わずにどっかりとお尻を乗せ、アベックトーストが入った紙袋をバックパックから取り出した。
ママお手製の少しばかり甘すぎるトーストは、教科書や参考書などに圧迫され、溢れんばかりに詰め込まれたキャラメルペーストとストロベリーのジャムを、間一髪といった様子で中に留めていた。
ずっしりと重いトーストを紙袋から取り出しながら、僕はミス・コリンズの事を考えていた。
ミス・コリンズを改札でみかけた時、僕はとても驚いたが、というのも、ミス・コリンズが公共の交通機関を使っているのをみたのは、それが初めてだったからだ。
ミス・コリンズは、いつでもその高い鼻をツン、と上に向けて、文字通りどこへでも歩いて行くのだ。
ある時は、広い野原の中で、白い花の雄しべだけを丁寧に採集していて(僕はそれを近くの空きビルから双眼鏡で見ていた)、またある時は、何の変哲もない電話ボックスの前で数分じっと立ち止まり、何事かをブツブツと囁きながら、足早にその場を立ち去ったり。
ミス・コリンズはたぶん動物と会話できるのだと、僕は本気でそう思っている。
ミス・コリンズに見つめられた動物達は、一瞬にしてミス・コリンズに対して従順になる。
僕は、ミス・コリンズが、野生のカラスを腕に留まらせて、木の上に引っかかっていた、なにかキラキラしたものを取ってこさせていたのを、見たことがある。
ミス・コリンズはとても綺麗なブラックの髪をしていて、それは肩まであるそこそこ長いものなのだが、僕は確かに、ミス・コリンズがある時一度耳のすぐ下くらいまでの短い白髪になっているのを見たことがある。
その日の内に、またいつもの黒髪に戻っているのも。
ミス・コリンズは魔女だ。
そうに違いないと僕は思っている。
ミス・コリンズ mo_modoki @mo_modoki
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