9-2
「あんたそれ、デートだって」
いつものファミレス、いつものメンバー。
パフェを食べながら、和美姉が口を開く。
「だからデートじゃねーって。龍音いるし」
「そんなの、口実に決まってるでしょ。女の子はね、もっと計算高いんだから。茜ちゃん、勇気を出してあんたを誘ったのよ」
「気ぃつかってくれただけだって」
「お前らもとうとうくっつくのか。何か俺、感慨深いよ」
シンジ兄ちゃんの言葉に、和美姉が「私も」と頷く。
「二人共やめてよ、そう言うの。大体、茜が可哀想だろ」
「可哀想? 何で」
「幼馴染ってだけでくっつけだの結婚だの言われて。他に好きな奴とかいたらどうすんだ」
俺が言うと「あぁー」と声が漏れた。
岬までもが頭を抱えている。
大樹と龍音はそれを見て不思議そうに顔を見合わせていた。
「お前、それは酷いよ」
「詩音兄ちゃん、最悪」
「あんた、普段はしっかりしてるのに何でこんな時は……」
「何だよ、みんなして」
俺が内心ドギマギしていると、和美姉がビッと俺を指差した。
「あんたねぇ、女の子が好きでもない男を祭りに誘う訳ないでしょうが!」
「逆の立場で考えてみろよ、詩音。お前が茜ちゃんを遊びに誘ったとして『気を使ってる』とか言われたらどう思うよ」
「えっ……それはちょっと、嫌かな。ムカつくし」
「そう言うことだよ」
「でも、俺とあいつじゃ状況が違うだろ。友達が子供抱えてたら、俺だって何かしてやれないかって考えるよ」
「茜ちゃん、部活もあるし友達も多いんでしょ? んなもん、幼馴染のよしみや気を使ったくらいで一々誘ったりする訳ないでしょ! それこそ、華の女子高生なんだし」
「そうかな……」
「まぁ、詩音も年頃の男子ってことだな。マイナスに考えて帳尻取ろうとしてんだよ。そうだ、詩音。当日俺の屋台寄れよ。サービスしてやるから」
「うちも行くつもりだし、会場で会うかもね。大丈夫。会っても邪魔しないから。いよいよ茜ちゃんの義妹化が濃厚になって来たのね。お姉ちゃん、感慨深いわぁ」
「まぁ、茜お姉ちゃんなら別に良いかな」
「あら、岬ってば素直ねえ。可愛い」
「ママ! 恥ずかしいからやめてってば!」
「詩音兄ちゃん、僕スパゲティ食べたい」
当人を置いてけぼりにしてどんどん場が盛り上がり、俺は頭を抱えた。
すると、俺の横に座っていた龍音がちょちょいと服を引っ張る。
「詩音は茜のこときらい?」
「何だよ、お前まで」
茜のことは、好きや嫌いとかじゃない。
幼稚園の頃から一緒だったし、親が仲良かったこともあって、ほとんど一緒にいるのが当たり前になっていた。
「……んなもん急に言われても分かんねぇよ」
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