第2話 不死の水兵
海軍基地の近くは多くの人で賑わう。
私もよく、ここらで必要な素材や食料を調達しているが、今日はいつもの賑わいとは違うざわめきがあった。
「なんだか今日はいつもより賑やかね。」
あまり騒がしいところは苦手な私は、必要なものを揃えてから休憩がてら浜辺に出かけた。
「あ、そういえば、海軍基地へ届ける手紙の束があったんだった。ついでに寄っていこ…」
よいしょと立ち上がり、後ろを振り向くと、透明感のある空色の髪の女の子にぶつかった。
「うぎゃっ!ご、ごめんなさい!」
勢いよく立ち上がったものだから、倒してしまったかと思えば、その女の子は私の肩を優しく掴み、
「心配ご無用、可愛いお嬢さん。僕は大丈夫。」
「え?僕?」
私がきょとんとして聞き返すと、女の子はしまったと口元を抑えた。
「癖なんだ、男ばっかの船の上にいるとさ。」
「船?」
「そ、僕はイギリスから来たんだ。ちょっとここの海軍の方に用があってね。」
(イギリス…)
「そうなん、ですか?」
「うん、それにしてもいい場所だね。こんなに可愛い子にも会えたし、ね?」
彼女はウインクをし、私はそれに何か嫌な予感がした。
「だ、だからって私とデートってどういう事?」
「案内してよ。ここら辺のこと僕全然知らないんだ。」
結構強引だなぁと思いながらも、私は何故かその場の空気感というのだろうか、いつもと違った街の賑やかさなどに釣られて、承諾してしまったのだった。
「僕の事はサキって呼んで。君は?」
「ロリア、この街の名前と似てるでしょ?」
「うん、綺麗な名前だ。」
「へっ?!そ、そうかな?!ありがとう…」
ございます…と、段々声が小さくなる。こんなにも率直に褒められることもなければ、そもそも恋愛に時間を割けるほどの暇がなかった私には、こんなことぐらいで真っ赤になってしまうのだった。
相手も女の子、なんだけど。
さすがに女の子から言われても、恥ずかしいものでは無いだろうか?
「君は何をしてる人?」
「私は郵便局を経営してるの。」
「君一人で?」
「一人、手伝ってくれている子がいるけど。」
「小さいのに大変そう。」
「サキは?」
「僕は水兵だよ。一応ね。」
淡々と話が続くが、私は不思議と退屈ではなかった。謎が多い彼女は私と同じくらいの歳に見えるのだが、なぜか…
「まだ若いのに、兵士になるって怖くないの」
「若い、ね。若く見えるかぁ。」
「…?実はすごくおばさん…?」
「はははっ、ロリア面白いね。」
大きく笑ったあと、サキは私の頬に手を添える。
突然のことにびっくりして退けようとしたけれど、サキは耳元で囁いた。
「僕は、死ねない身体なんだ。」
郵便屋の少女と水兵の少女 海底朧月 @loveroria0128
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。郵便屋の少女と水兵の少女の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます