第9話(第9話)夢見る頃を過ぎてもなお
だめ・・・だめよ・・・やっぱり駄目よ・・・。
私は、初めてなのよ・・・。初めてなのに、いきなりSM部屋で初体験とかハードすぎて心と体がついていかないよ・・・。
しかも、いくらイケメンとはいえ、健二君は二人子持ちの男だし。やっぱり最初の男は、自分の事を心から愛してくれている人じゃないと後悔するんじゃないかなって、ここに来て段々思うようになってきた。
でも、初体験って、もしかすると案外こんなものなのかもしれない。
昔、小春から
「初めてアレした時ってさぁ。皆どうだった?「あっ、こんなもんなの」って感じで終わっちゃった。」
って、あっけらかんと答えてたの覚えてる。
小春は、学生時代は手当たり次第に人のものばかり手をつけては捨ててた。
そんな小春の初体験は、16の頃だったそうだ。ナンパで知り合った見知らぬ男で、その日のうちに終わって二度と会っていないという。
小春は、「どうってことないわ」みたいな顔して話そうとしてたけど、いつも目の奥は悲しげだった。
本当は、もっと大切にしたかったのではないだろうか。処女の事を。もしかして、そのトラウマが引き金となって色んな人の恋を邪魔するキッカケになったのではないだろうか・・・?
となると、やはり最初(処女)は、大事にしないといけないのではないか?
しかし、私は35歳。もう、処女の価値なんて叩き売りしても売れないレベルなんじゃないだろうか。
この機会を逃したら、もっともっと出会いの質も落ちていって、ブサイク・ハゲ・包茎・無職とかしか釣れなくなっていって・・・。
現実を受け止める事が出来ぬまま、処女を抱え込んで生きていき、そのまま墓場行きするんじゃないかって思ってきたの。
それなら、いくら二人子持ちとはいえ、本当は私の事は恐らく遊びなんだろうと薄々わかっているんだけど、イケメン健二君にここで抱かれた方がいいのではないだろうか?そしたら、何か色々諦めとかつくんじゃないかな。
こうして、男を知ることで男に対して幻想とか、もう抱かなくなって現実の恋にも、踏み込んでゆけるんじゃないかな。
バージンじゃなくなったら、男に対して妥協も出来るんじゃないかって思ったの。
でも、やっぱり。怖いよ。いざとなると。健二君の指、想像以上に太いし。
「私、初めてです」いってんのに、遠慮しないで思い切りガンガンやってくるし。「優しくするから」なんて、口約束。娘二人いるのに不倫なんてする男が、守る訳ないのかな・・・。
結構、健二君ってもしかすると自己中ってゆーか。
人の気持ちとか、何も考えないタイプなんじゃないの?って段々思ってきた。言葉や会話よりも、体を重ねると性格って出るものなのかもしれない。
私は「痛い!」と、何度も言っては中断させた。
結局、何も出来ないままコトは終わり、隣の健二君は「いいよ。仕方ないよ。」と言いながらも、とても不満そうにムッとしていた。
この日から、健二君にちょくちょく私からメールしても返って来たり来なかったりの日々が続いた。そして、もう健二君と会うことは二度と無かった。その後、私は健二君との事を墓場までずっと持っていこうと思っていた。
しかし、健二君の妹の真弓と会う機会があり。我慢出来ずに、全てを打ち明けた。
真弓は、「ああ。お兄ちゃん。またそんな事してんだ。」と、アッサリしてた。
どうも、真弓の兄である健二君の浮気癖は、昔からの常習犯だったそうだ。父親譲りの女癖の悪さに、妹の真弓も手を焼いているそうだ。
浮気の為に、偽りの自分を演じる健二君。その為、ホテル代はいつも借金して作っているそうだ。
愛想を尽かした嫁とは別居状態。何故か、真弓の所に金をせびりに来ることもあるそうだ。
真弓としては、一度でも兄貴のせいで友達に売られた過去がある。酷いトラウマまで植え付けられた、生粋のクズ男なのだ。真弓は、溜息交じりに答えた。それでも、縁を切りたくても血縁とは切れないのだ・・。
やがて、真弓は声を震わせながら私に言った。
「あのさ。被害者顔なんてしないでよね。
正直、ついてく方も自業自得でしょ。
男なんてね、目的の為ならいくらでも嘘つけるの。
少なくとも、ベットで男が話す言葉なんてね。真に受けてたら駄目よ!
真実はね、行動で見ないと駄目。
でも、いい経験になったでしょ?
初めては、もっと大切にしないとダメよ。
少なくとも、私みたいな道歩んじゃ駄目よ。」
と・・・。
あれ?おかしいな?私、真弓に「処女」って事バラしたこと無かったんだけど?
そんな不思議そうな私に、真弓は自信タップリにこう答えた。
「一体、何年あんたの友達してると思ってるの?
そんな嘘位、見抜けない訳ないでしょ。
そうだ。今度、スタバでフルーツヨーグルトのフラペチーノが出たみたい!今度、気分転換に一緒に飲みにいかない?」
「女の友情が浅はか」だなんて、ずっとずっと思っていた事すら、全て嘘にしてしまいたい。
結局、私は今も処女のままだけど。こうして、相変わらず友達とスタバで愚痴語りあったりしてるままだけど。
それでも、不思議なことに前の自分よりもずっと心がスッとしてる気がする。
私の下半身の膜は結局、開花の改心を迎える事はなかったけど、もう35にもなって夢とか見てる場合じゃないのかもしれないけど。
それでも、ヨーグルトフラペチーノを飲みながら、決意している自分がいる。大切にしていきたい何かをこれから探していこうってね。
この胸に溢れんばかりのありったけの想いを 多良はじき @hazitara-24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます