「採点の時間」(終)
「……面白いなぁ、君達は」
気まずい沈黙の後、デザートが呟いた。その声は冷たかったが、嘘を言っている風ではなく、本当に面白いと思っているらしい。
「うん。じゃあ、待ってあげるの。どうせ今すぐ採点するのは無理だしね。くひひ。バイトかぁ。考えもしなかったの」
ざっざっ、と砂を蹴りながら、スペードの手前まで歩く。
何をする気なんだ。
「この子は持って帰るね。じゃあ、いつになるか分からないけど、また会おうね」
スペードの首根っこを持ち上げ、出てきた時と同じように、気が付いたら消えた。
「終わったのか」
「いいえ、始まりですよ。彰彦さん。これからも迷惑かけると思いますけど、よろしくお願いしますね!」
「はいはい、よろしくお願いしますよ」
全く。
初めて会った時と何も変わらない。勝手なこと言ってやがる。
すっかり肩の荷が下りた気分になり、伸びをすると、いつの間にやら気持ちの良い青空が広がっていた。
こんなに清々しい気分は何年振りだろう。
ひょっとして俺が今、何も着ていないからだろうか。
学校の事、バイトの事、君野、白雪先輩、そして、空。色々とやり残したことも、取り返しのつかないこともあるけれど、それもナナと共に何とかしていけば良い。
取り敢えず、今はそう。
人に見つからないように、家に帰ろう。
1week 魔法少女の卒業試験 石嶺 経 @ishiminekei
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