スーパーファミコンと学び

いただきストリート2と私

 通称「いたスト2」で、基本システムはモノポリーみたいな感じである。

 所持金を一定額配布されて、さいころを振ってマスを進んでいく。空き地に止まって資金があれば、その土地を購入し、建物を建てられる。そこに他のプレイヤーが止まると、一定の通行料を得られる。土地は増資して、通行料を高めることもできる。また、同じ色の土地を買うと地価が高まり、同色を独占すると地価は跳ね上がる。


 さいころのマスは循環型で、チェックポイントを通過して銀行に戻ると資金が増える。で目的額を最初に達成し、銀行に戻ったプレイヤーの勝利である。カードのないカルドセプトっていうか。


 チェックポイントではビンゴカードを開くことが出来て、基本的にはプラスの効能が発生する。また、ビンゴ列を伸ばすとボーナスで資金が得られる。ビンゴカードはプレイヤー間で共有されているので、相互に離れたマスを選択してお互い利潤を追求するも良し、他人の列を伸ばさないように封じ込める嫌がらせをするも良し。


 特殊なマスに止まると、ただの建物ではなく、ワープが可能になるヘリポートとかを建てられたりもする。ここで何を選ぶかが腕の見せ所である。また、店の価値の五倍の金銭を持っていると、無理やり買取が出来たり、他人と交渉をして土地の交換が出来たりもする。


 まあそこそこスタンダードなボードゲームであると言えるが、このゲームのウリはエリアごとに発行される株式市場があることで、標準的な戦略としては自分が建物を持っているエリアの株を買う。で、建物に増資するなり、エリアにもう一軒建物を建てるなりすると株価があがるので、ゴールまでのスピードがアップする、とこういう仕組みであるが、皆さんちょっと眉を顰めたと思う。ってのは、それ「インサイダー取引」じゃあないのかって思いましたよね? そうなのである。このゲームではインサイダー取引が余裕で可能、かつ推奨された手順で、説明書には次のような文面が書いてある。「実際にこういう株の買い方をすると、インサイダー取引になるので注意してください」。


 当たり前だがインサイダー取引なんて聞いたことがなかった俺は、なんじゃいなこれ、と親に聞いた。したら親も「よくわかんね」と言い出す。ええっと思って教師に尋ねる。教師もよく分からんと言い出す。まあたしかに、今俺が誰かに聞かれても困る。株価が上がる、下がるような事態を知ってて、取引をするのはダメだよって話なのだろう。たとえばなんか画期的な新商品(スーパーファミコンとか)を発表することを知ってて、ニンテンドーの株を買うのはダメ。まあこれは分からんでもないですよね。あがるの知ってて買うのはズルイじゃんとそういうことになる。


 でも世の中の株を買ってる人は四季報? とかそういうの見て、業績上がりそうとか下がりそうとか、そろそろ新商品が出るはずとかで買ったり売ったりしてるはずで、それとの区分はどこにあるんだというとよく分からない。


 また、たとえば会社づとめをしてて、ストックオプションがありますと。で、家族が病に倒れて現金が必要になったとして、株式を現金化しましたと。そしたらたまたまというか、次の経営発表で前年比マイナス83 %って結果が出ましたと。そら株価は下がりますわな。でもこの場合、インサイダー取引だってなる、なり得る訳である。理不尽くない?


 こんな訳の分からないことがこの世にあるのか! と不思議と興奮して、それで、というわけでもないがこのゲームは結構好きだった。


 特に「自分のエリアの株を買わなくても良い戦略」を編み出した時は楽しかった。どういうことかと言うと、(インサイダーなんだけど)、自分がこれから増資しよ、と思ってるエリアの株を買い漁っておいて、で増資をして儲けるというのが基本戦略だとするなら、これは奇手で、たとえば4つ買うと独占できるエリアがあるとする。ここを自分以外のプレイヤーが三つまで買ってるとしたらば、このプレイヤーがここを増資して勝負に出るのは目に見えている。そしたらどうするかって言うと、このエリアの株を先に抑えておくわけ。


 そうすることによって、仮にこのプレイヤーが増資をしてったとしたら、自分も儲けられる。なんなら、値上がってから株を売り飛ばすと株価が下がるので、相手に増資をさせておきながらこっちはトクをした上に、最終的に相手に損失まで与えられる。 

 さりとてそれが嫌だからと言って土地の増資を控えると、今度は収益が減るのでゴールが遠のく。その間にこちらが金を稼げば、うまくいけば増資してない独占間近だった建物を買収して、優位に立つことが出来たりもする。このプレイをして何度弟を泣かせたことか。


 兄より優れた弟はいない、と言うが、まあ幼少期の1年ってでかいので、基本的に戦略で上回るのは常に俺だった。ビンゴカードで「次回のサイコロは1!」ってなった時に、次のマスにある俺の建物を全力でデパートまで増資した時なんかは、弟がわめき散らしてリセットの暴挙に出て、リアルファイトに発展した。全然美しくないが、懐かしい思い出である。


 ところでこんだけ泣かしたのにも関わらず、俺今風邪をひいているのだが、「なんか風邪ひいたんだって? なんか買ってこうか?」とSMSを飛ばしてくれる弟は人間が出来ていると思う。いつかまた、いたスト2、あるいは桃鉄をダラダラやってみたいと思ったりもしている。今はきっと対等、いや俺は当時に比べて相当ポンコツになっているので、劣勢までありえて、でもきっと楽しいんじゃあないかなと思っている。


 

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