夜空君、全部話して!!





「ど、どうしたの?何か……」

「夜空君。アルバム、聴いたよ。」

「……そっか。」

「とっても、よかった。やっと、等身大の夜空君を見れた気がして。」

「そ、そう?大分恥ずかしかったんだけど。」


夜空君の胸に顔を押し付けているから、向こうの顔は見えない。


「でも、よかった。一番、最高のアルバムだったよ。なんか、告白みたいで。」

「あはは……」

「ねえ、夜空君。」


わたしは、一歩下がって夜空君から離れると、その大好きな顔を見上げる。

ああ、わたしは今どんな顔をしているんだろう。


「本当は、待つつもりだったんだ。夜空君から話してくれるまで。でも、アルバムを聴いて、思ったんだ。一人で、抱え込んでるんだって。

 咲ちゃんには話したんでしょ?『あの日』のこと。」


その問いに、夜空君は一瞬迷ったように目線を動かしたあと、こくんと頷く。


「咲ちゃん、何か言ってた?」

「……お兄ちゃんは、悪くないって。仕方ないんだって。」

「うん。夜空君も前、天輝さんに『あれは仕方なかった』って言ってたもんね。」

「やっぱり聞いてたんだ。」

「うん。ごめんね。でも、わたしが言いたいのはそこじゃないんだ。夜空君も『仕方ない』って思ってるなら、どうして咲ちゃんに向かって負い目を感じてるような歌を創ったの?」

「……表面では『仕方ない』って思ってても、心はそう思ってないから。」


それは、咲ちゃんから『仕方ない』って言われた今もなんだろうな。

全部聞いた咲ちゃんから、『仕方ない』って言われても、自分を許せなくて、今も悩んでる。

次の言葉に、迷う。

でも、なにも浮かばなくて。

だから、もう言いたいことを、偉そうなことでもいいから、言うことにした。


「夜空君!全部、全部わたしに話してよ!咲ちゃんだけで足りないなら、わたしも夜空君に『仕方ないよ、悪くないよ』って言ってあげる!たとえ、夜空君が悪かったとしても、わたしは、その罪悪感を一緒に背負ってあげる!

だから、わたしに『あの日』のことを話して!」


驚いたように目を見開いて、目を閉じて、何かを考えて。

どれくらい、そうしていたのだろう。


「……ごめん。やっぱり、できない。」


そう、絞り出すように言った。





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