夜空君、約束って?
幕が下りた後もしばらくの間、司会の人すら無言だった。
やっと誰かが喋ったと思ったら、拍手と、歓声と、驚愕の声の嵐。
それを司会の人も収められず、いよいよ収まりがつかなくなった。
それをすみれちゃんが見事な手腕で終わらせて、そのままの流れで文化祭終わりの挨拶。
で、片づけして解散。
わたしのクラスのほうが夜空君のクラスよりも片づけ終わるの遅かったから、夜空君には先に帰っててもらった。
「ただいまー。」
わざわざ中から鍵を開けてもらうのも悪いので、夜空君から貰った合鍵を使って中に入る。
あれ?返事がない。
というか、部屋が暗いし、人の気配がしない。
少し不安になりながらも、廊下の電気をつけ、リビングへ向かう。
真っ暗なリビングの電気をパチッとつけ、灯りを確保。
やっぱり、誰もいない。
「なにか、あったのかな?」
でも、夜空君なら何かあっても全部どうにかしちゃいそう。
だったら、自分から何処かに行った?
でも、何処に……
「ん?なんだろ、これ。」
ふと見たテーブルの上に置いてあったのは、メッセージ付きの小包と、置手紙。
『千雪へ』って書いてあるし、夜空君が用意した者なんだろうけど、なんなんだろ?
まあ、まずは置手紙の方から読もうかな。
『出かけてくる。ご飯は作っておいたから、適当に食べてて。』
……いや、メールで言えばよくない?
何でわざわざ置手紙で……
「ま、いっか。夜空君も忙しいんでしょ。で、こっちは何だろ……」
小包は、そんなに重くなくて、中には四角っぽい何かが入っている。
なんだろ、これ。
メッセージカードがついていたので読んでみるけど、書いてあったのは『約束のもの』って五文字。発音で数えても七文字。
いや、余計わからないんだけど!!?
とはいえ、いくらいない人にツッコミを入れても返事は来ないから、とりあえず中身を見る。
「……え?」
中に入っていたのは、プラスチック。
そこには一人の男の子が描かれていて、絵の中からこちらに手を伸ばしている。
そして、そこに入っている『僕の歌 星空深夜』という文字。
これはもしかして……
「新しいアルバム?」
そういえば、言ってた。
『発売日前のCDとかラノベとか、先輩にプレゼントしましょうか?』って
そっか。だから、約束のものなんだ。
「ありがとう……」
そんなに大きくないから、抱きしめるというか胸に当ててる感じなんだけど、それがとても暖かく感じて。
「じゃあ、せっかくだから、聴かせてもらおうかな?」
たぶん、夜空君はわたしがゆっくり聞けるように外にいるんじゃないかと思う。
わたしは駆けるように階段を上がると、ふとあの時のキスを思い出して……すぐ頭から消す。
あれは、わたしの暴走。黒歴史レベル!
夜空君から借りている部屋に入って、音楽を聴けるものが無いことに気が付く。
……あ、そうだ。夜空君の部屋を使わせてもらおう。
そう思い、わたしは扉から廊下に出ると、すぐ近くの夜空君の部屋に入る。
「お邪魔しまーす。」
そう言いながら中に入って、電気をつける。
相変わらず清潔感のある部屋。世の中の男子高校生ってみんなこうなの?
わたしは、部屋にあったコンポの電源を入れると、開いてCDを入れる。
どんな曲なんだろう。
どんな世界を聴かせてくれるんだろう。
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