夜空君、会長ってそんな特権があるの?



夜空君との模擬店巡りも終わって、文化部とかの発表の時間。

すみれちゃん(会長)の特権とかで、最前列に場所をとることができた。

いや、ここ明らかに生徒会関係者の席だと思うんだけど!?


「ああ、気にしなくていいよ。どうせ大翔もいないし。」

「いや、そういう問題じゃなくて……」

「まあ、秋川はある意味関係者だし、問題ないよ。」


いや、ちょっと言ってる意味がわからないんだけど……

問題しかないよね!?


『さあ、始まりました!文化部と有志の方々によるステージ発表!最後には、スペシャルゲストが待っているぞ!!お楽しみに!!

というわけで、まず最初の発表は――』


無題に高いテンションとボリュームの司会の人が、そうマイクを使って言うもんだから、とにかく煩い。


「むぅ……」

「ん?機嫌悪い?」

「だって、夜空君が……」

「ああ…………まあ、あれはあれで忙しいんでしょ。」

「そっか。」


そりゃあそうなんだけどね、残念なものは残念だし……


「あ、そうだ。大翔から聞いた深星情報あるんだけど、いる?」

「いる!」


なにその宝物!!

絶対欲しい!お小遣い全部捧げてでも欲しい!


「咲ちゃんにも関係あることなんだけど。夏休みに泊りに行ったときに話した中で、『あの日』ってワードがあったでしょ?それについての情報なんだけどね。」


あの日。


夜空君と天輝さんの言い争いの時に言ってた、咲ちゃんの足が動かなくなった日。

わたしが聞いてもいいのだろうか。

勝手に、他人のわたしが聞いてもいいのだろうか。


「実は、これはもう夜空自身が咲に話したらしいんだけど、あの日、咲ちゃんの足が動かなくなった原因は、火事で崩れた色々が落ちたせいなんだって。」

「じゃあ、原因は火事ってこと?」

「うん。」


火事。

でも、咲ちゃんの体にはそれらしい痕なんて……


「あ……そう言えば、肌の露出が少ないワンピース型だったかも……」

「うん。着替え手伝ったけど、手術の痕っぽいのはあったよ。」


『手術の痕』ってことは、それ以外はなかったってこと。

そっか。火傷は無いから、咲ちゃんは、『火事で』って言うんじゃなく、『がれきで』って言ったんだ。


「ま、私たちが考えても分かんないよ。秋川なら聞けるんじゃない?直接。」


そんなに信用されているわけじゃないと思う。

ただ、何となく一緒に居るから、夜空君は優しくしてくれるだけじゃないかな。

でも、夜空君が誰かに話したいって思うなら、わたしが聞く人になりたいって気持ちはある。


「聞けるなら、聞きたい。けど……」


楽器と誰かの歌声、そして歓声しか・・聞こえない。

わたしが聞きたい声も、聞いてもいいと思える声もなくて、ただ不快になるだけ。

他の人と普通に話すのは嫌いじゃない。

女の子特有のボディタッチも嫌いじゃない。

ただ、やっぱり声は好きになれない。


でも、夜空君の声は違った。

通学路で、話しかけられてた夜空君。

第一印象はかっこいい人。

でも、大翔さんと話す夜空君の声が、何故か……


『さあ、次で最後の発表です!』


もう最後なんだ。

たぶん、時間は経っているのだろうけど、楽しいことを想っていると、すぐに時間は流れる。

難しいことを考えても、時間は流れる。


『我が校トップクラスの有名人!女子から絶大な人気を誇る、が来てくれました!』


そんな大袈裟な紹介とともに、幕が上がる。

誰だろう?

あ、大翔さんかな?ここにいないし。

まあ、別に見なくてもいいや。


歓声が、上がる。






たぶん、その時ステージを見たのは偶然。

ただ、歓声が上がったから、なんだろうと思っただけ。



そのタイミングは、奇跡のように、スピーカーから声が聞こえるタイミングに重なった。




――こんにちは。




聞きたかった声。

そこに、いるはずがないと思っていた人物。



『深星夜空です。』



マイク越しでも、それが本人だとわかる声。

わたしが、唯一家族以外で聞いていたいと思える声。


ステージの中央に堂々と立つその姿は、まさしく夜空君王子様そのものだった。




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