夜空君、適当に歩く?




「はぁ、はぁ、死ぬかと思った……」

「……僕は鼓膜が破れそうだった……お化け屋敷を選んだのは失策……」


夜空君は疲れた感じでそう言うけど、一番疲れたのはわたしだと思う。

叫ぶのって結構疲れるんだよ!!本当に怖かったし!!


「夜空君、次は平和なところにしようか。」

「そうだね。僕の鼓膜的にもそれがいいと思うし。」


夜空君はわたしが怖がってるとかよりも自分の鼓膜のほうが大事みたい。そりゃあそうか。


でも、何処に行こうかなぁ……

あ、ここって!


「夜空君、プラネタリウムあるんだって!せっかく名前に星も夜空も入ってるんだから、行くしかないよね!」

「その論理で行くと、千雪は雪山に行かなくちゃいけないことになるけど?」

「……夜空君と一緒ならいいよ?」

「そういうことを言ってるんじゃないんだけど……まあいいか。」

「?」


なんか、微妙に話がかみ合ってない気がする……

何でだろ……


「まあ、プラネタリウムに行こうか。他に行くところもないし。」

「そうだね!そうと決まればレッツゴー!」


地図を右手でもって、左手で夜空君の手を引きながらプラネタリウムのある教室に向かう。















「結構楽しめたね!」

「そうだね。ただ、もう少し部屋が暗くなる工夫をしたほうがよかったんじゃないかな。」

「まあ、本当のプラネタリウムじゃないんだし、これくらいが丁度いいんだよ。あのお化け屋敷みたいに本気のクオリティ出さなくても。」

「……そんなに怖いかなぁ?」


夜空君は分かってない。自分のメンタルがどれだけ強いのかを……

そもそも、どんなにわたしが無防備な姿になっても全然興奮したように見えないし、なにがあっても全然動じないし……


「夜空君って人間なの?」

「何でみんなそう訊くんだろうね。」


うん。やっぱりよく訊かれるんだ。

仕方ないよね。夜空君だもん。

出来ないことを探す方が難しい夜空君だもん。


「まあ、僕が人外かもしれないって話はさておき、次はどこに行く?プラネタリウムで結構時間取っちゃったから、そんなに長い時間は残ってないけど。」

「うーん。どうしようかなぁ……」


正直、夜空君と一緒に居れればそれだけで十分楽しいんだけどさ、それじゃあこれ以上前に進めないだろうし……


「じゃあ、とりあえず食べ物の店見て回ろうか。」

「了解。じゃあ、適当に歩く?」

「うん。」


つないでいた手をしっかりと握りなおすと、夜空君が先を歩いてくれる。


「夜空君、文化部の発表なんだけど、一緒に見ない?」


ふと、今日は文化部と有志団体による発表があるのを思い出した。

きっと、夜空君ならいいって言ってくいれるはず。

そう、謎の自信があった。

でも……



「ごめんね。その時は、手伝いしなくちゃいけないんだ。」



そう、断られた。

そりゃあそうだよね。いつも一緒に居てくれるわけないし、忙しい時だってある。

これは、わたしの我が儘だから、仕方ない。


「そっか。そうだよね。」

「あ、そのことなんだけど、会長が千雪と一緒に見たいって言ってたから、そっちと一緒に行ったら?」

「うん。そうする。」


残念。


「じゃあ、行こうか!」


そう夜空君に言うのは空元気以外の何物でもないけど、夜空君に罪悪感を持たせちゃったら悪い。

だから、たまには気を使わないとね。



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