夜空君、声おかしいよ?




「何でもないならいいけど。で、何処行く?」

「どこでもいいけど……とりあえずツッコミ入れてもいい?」

「別にいいけど。」


いや、本人がわざとやってる・・・・・・・ならツッコミ入れてあげないとかわいそうだよね?


「夜空君、いつまで女の人の声のままなの?」

「え?」


そう返してくる夜空君は、明らかに何のことかわかっていなかったらしい。

てっきり、ずっと女の人の声なのはボケかと思ってたけど、違ったんだ……


「あ、本当だ。声戻さないと。あーー、あー、あー?」


何回か「あー」って違う声で出したけれど、首を傾げてやめてしまう。


「ねえ、元の僕の声がわからなくなったんだけど……」

「……何で自分の声がわからなくなるの?」


どういう状況なの!?

いくら声変えてるといっても、わからなくなるっておかしいと思うんだけど!?

っていうか、夜空君一度覚えたことは忘れないんじゃなかったの!?


「忘れないは忘れないけど、自分の声を自分で聞くのって難しくて、今の自分の声がよくわからないんだよね……」

「心読まれた!?」

「いや、声に出てたし……」

「嘘!?」


全く気が付かなかった……

よし、今度からは気を付ける方針で行こう。


「あー、あーあーあーー。よし、たぶんこれでオーケー。」

「うん。その声だよ。」


数回調整した後、やっと元の声が出たみたい。


「じゃあ、気を取り直して。何処行く?」

「どこでもいいよ。」

「いや、僕も何処でもいいんだけど……それだと決まらなそうだから、お化け屋敷でも行く?」

「え……」


お化け屋敷?


…………

…………


べ、別に嫌ってわけじゃあないし、怖いわけでもないんだけど……

なんでよりにもよってそれかなぁ?

いや、何処でもいいって言った手前、嫌だとは言いにくいし……


「もしかして、お化け怖いの?」

「そ、そんなわけないじゃん!い、い、行こうか!」

「……つないだ手の震え凄いし、明らかに怖がってるのバレバレなんだけど。」

「細かいことはいいの!」


夜空君が行きたいところなら、たとえ何処だって!

夜空君と一緒なら、お化けなんかこわくない筈!







…………と、思っていた時期もありました。


「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

「っつ!鼓膜……」

「ひ、ひいっ!」


無理無理無理!

何このお化け屋敷!怖すぎでしょ!

これ作った人、どんな神経してるの!?

こんな怖さ、文化祭でするレベルじゃないよ!!


「……そんな怖いかなぁ?」

「怖いよ!!」


もう、足の力が抜けちゃって、夜空君につかまってないと立つこともできないし……


「だって、生徒会に頼まれてこれの設計とか小道具とか手伝ったの僕だし。そんな怖がることないようにしたつもりなんだけどなぁ?」

「夜空君が犯人か!!道理で怖いはずきゃああああ!!」

「うっ……鼓膜が……」


無理無理無理!

ほんっと怖い!!!




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