夜空君、見たい?
わたしの学校では、文化祭は九月の第一土曜日に行われる。
そして、その次の月曜が振り替え休日になるんだけど……
「去年も思ったけど、この日程無茶だよね?いくら木曜日と金曜日は授業の時間に準備出来るって言ってもさ。」
「千雪、気持ちは分かるけど、仕方ないでしょ。」
そう。わたしは今、文化祭の準備に追われていた。
というか、昨日出し物を決めたのに、もう準備とか……時間が無さすぎるんだよ!!
そう言いながら小物を作っても作っても終わる気がしない!
「ああもう!終わらないでしょこんなの!メイド喫茶小物多すぎ!」
「まあ、仕方ないんじゃない?せっかくの出し物なんだし、かわいいほうがいいでしょ?」
「そうだけど、わたしこういう作業は得意じゃないし……」
「いや、かなり上手だからね?千雪、そういう謙虚なところもいいと思うけど、もう少し自覚したほうがいいと思うよ。」
「いや、わたしなんか全然だよ。夜空君ならこれ以上のクオリティーで、この倍のペースで作っちゃうし……」
「あの人と比べちゃ駄目だよ。人間かどうかも怪しいんだから。」
いや、人間だとは思うけど……あれ?でも、普通の人間は銃弾を躱せな……そもそも銃弾を躱したところなんて見たことなかったっけ……ああ、疲れてるっぽいなぁ……
「はぁ……」
「……千雪がため息吐くのは違和感あるよね。なんでだろ。」
「ごめん。もうツッコミを入れる気力はないんだ……」
「そんなに深星くんと会えなかったの気にしてる?」
「だってぇ……だってぇ……」
「まあ、昼休みくらいは好きな人と会いたいって気持ちも分かるけど、深星くん忙しそうだったから仕方ないでしょ?ほら、元気出して。」
「もう五時だよぉ……何もなかったら夜空君に甘えてる時間なのに……」
「……恋人でもないのに凄いよね……」
恋人かぁ……なれるものならなりたいけど、夜空君だしなぁ……無理そうだなぁ……
わたしから告白する勇気もないし。
「……もうしばらくだけ、今のままじゃダメかな?」
「うーん。千雪が良いならいいと思うけど、あんな優良物件取られちゃいそうだよ?」
「だよねぇ……取られちゃうのは嫌だけど、今の関係を壊したくないしなぁ……」
いまも十分幸せだし……まあ、夜空君に会えればだけど。
細かい作業も嫌いじゃないんだけど、夜空君がいないとやる気が起きないなぁ……
「あ、千雪ちゃん。メイド服のサイズ測るから来てくれない?」
「りょうかいーい。」
同じクラスの芽衣ちゃんに呼ばれたので、ついていくことにする。
ああ、メイド服着るのも嫌だしなぁ……
……でも……
「夜空君が見たいって言うなら、着てもいいかな?」
そう呟いてから、自分はそこまで夜空君にベタ惚れだったのかと恥ずかしくなったのは夜空君には絶対に秘密。
まあ、いつかは…………
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