夜空君、多数決で決めたんでしょ?
「え?夜空君が最悪って言うような内容なの?」
「うん。実は…………
…………男装女装喫茶なんだ…………」
「え…………」
長い溜めの後に苦虫を噛み潰したような表情で言ったそれは、二次元の中では定番ではあるけれど、実際去年はなかったものだった。
「……それ多数決で決めたんでしょ?みんな反対しなかったの?」
「いや、最初は反対してたんだけど、提案者の情熱がすごくて……」
「本当に何があったの!?」
「例えば、『この模擬店なら、他のクラスはやりたがらないからオンリーワンだ!』とか、『深星という戦力がいる以上、使わない手はない!』とか、『話題性があるから、きっと儲かる!』とか、『せっかく馬鹿なことを堂々とできるんだから、馬鹿なことをしようぜ!』とか、『女子のみんな!ズボンを履くだけで面白い男子の姿が見れるんだぞ!』とか……」
……その人は、男装女装喫茶に対して情熱がありすぎだと思うんだけど……
「あ、なんか……おつかれ。」
「うん。疲れた……」
「でもさ、その人もきっと、クラスが盛り上がる為にそういうことを言ったんだよ。」
「……ちなみに、そいつの性癖っていうのが『男装女子』なんだって……」
「私欲にまみれすぎてた!!?」
何その情熱!!?もっと別なことに使おうよ!勿体ない!
「っていうか、わたしには男装女子が良いっていう気持ちが全くわからないんだけど!」
「……私はちょっとわかるかな?」
「え……」
恵果ちゃんが言った一言が信じられなくて、思わず目を見開く。
いや、本気で言ってるなら友達としての付き合い方を……
「それ、本気で言ってる?」
「まあ、半分くらいは。だってさ、自分の立場に置き換えてみなよ。」
「自分の立場?」
思わず聞き返してしまった。
恵果ちゃんはこくんと頷くと、わたしの耳に口元を近づける。
「深星くんが女装してるって考えたらさ、見てみたくならない?」
「…………なる。」
「そういうことだと思うよ。まあ、そこまでの情熱は要らないけど。」
なるほど、そういうことか…………
男装女装喫茶、奥が深いなぁ…………って、何か違う気がする。
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