第三章 暁 流れ
夜空君、わたしのせいで……
「こっちから誘ったのに来ていただくことになってしまい、すいません。」
夏休みももう終わるという頃、わたしは夜空君の妹の咲ちゃんに呼び出しを受けた。
相変わらず、夜空君に顔が似てるなぁ……
うっ……夜空君……
「うん。大丈夫だよ。わたしも暇だったし。それに、咲ちゃんの家にも来てみたかったしね。」
咲ちゃんはお父さんとお母さんと暮らしているらしい。
ていうか、この家すごく大きいんだけど!?
何LDKあるんだろ……知りたいような知りたくないような。
「そうですか。母がいないのでおもてなしもできませんけど、あがってください。」
「うん。」
わたしは玄関で靴を脱ぐと、出されたスリッパを履く。
そのまま咲ちゃんについていくと、大きなリビングに通される。
「適当なところに座っていてください。」
そう言われたから、柔らかそうなソファーに腰かける。
え!?なんでこんなにふかふかなの!?
「そんなに驚かなくても……」
「いやいやいや!驚くよ!だって凄い高そうだもん!」
「まあ、父が会社の社長ですからね。」
「そ、そうなんだ……」
なんてコメントすればいいか……
「ま、それは良いとして、千雪さんに聞かなくてはいけないことがあります。」
え?
なんか急にオーラが……
な、なんか怖い!
「な、なに?」
「ズバリ、夏休みでどこまで行ったかです。」
ああ……
恐れていた質問が来てしまった……
「誰と?」
そして、悪あがき。
「勿論、お兄ちゃんとです。で、水族館デートくらいはしましたか?」
「……いいえ。」
わたしは目線を逸らしながら小さな声で答えるしかない。
だって!すごいオーラが怖いんだもん!尋問だよ!これ!
「なら、遊園地には?」
「……行ってないです。」
「はぁ?じゃあ何してたんですか!?一緒にデパートとか、買い物ぐらいは行きましたよね!?」
「……すいません。」
「はぁ……千雪さん、お兄ちゃんともっと近づきたくないんですか?それに、千雪さんしかお兄ちゃんの心を開く可能性が無いんですよ!」
「本当にすいません!」
「全くですよ……謝るくらいならお兄ちゃんとデートの一つぐらいしてほしいものです。」
咲ちゃんはそう呆れたように言うと、スマホを取り出す。
わたしはそれを見て、悪い予感がした。
「ちょ、咲ちゃん?なにしようとしてるの?」
「決まってるじゃないですか。お兄ちゃんに電話して、今からデートをしてもらうんですよ。」
「ま、待って!その前に話さなきゃいけないことがあるから!」
「……なんですか?悪い予感しかしないんですけど……」
咲ちゃんはそう言いながらも、スマホの画面から手を離す。
「実は……夜空君、わたしのせいで引きこもっちゃって……」
「…………は?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます