先輩、あれ?




……眩しい。


そう思い、僕が目をあけると、澄み渡る青空が広がっていた。

あれ?なんで?


……ああ、そうか。昨日はあのまま砂浜で寝ちゃったんだった。


僕は体をゆっくり起こすと、一度パーカーを脱いで、フードの中に入った砂や、服に着いた砂などを払い落とす。

砂を払い終わったパーカーを羽織ると、立ち上がってズボンの砂も払う。


太陽を見ると、まだまだ高度は低い。たぶん六時くらい。西のほうを見てみると、まだほんのり赤っぽかった。


僕は伸びを一回すると、特にあてもなく砂浜を歩き始める。

スニーカーで砂を踏む感触。

どこまでが海で、どこまでが空かもわからないほど青い風景。

そのまま上を見上げると見えるのは、湿度の高い夏特有の長い飛行機雲。


「ふん、ふふふ~ん。ふふ~ん。」


思わず口からメロディーが出てくる。

ああ、一人っていいな。

最近は先輩が家に来て一人の時間が作れなかったから、こういう時間が癒しになる。


僕は何の当てもなく、何の荷物もない状態でただ砂浜を歩く。


ふと、足元に一本の長い木の枝を見つけた。

僕はそれを手に取ると、砂浜に大きな絵を描き始める。


ザー

シャッ

ザーザー


そうやって出来上がったのは、自分でもよくわからない『何か』。

テーマは海と空と雲。

絵でも記号や象形文字でもない『何か』


うん。何となく青いイメージが伝わってくる。


僕は木の枝をそこに刺すと、またあてもなく歩き出す。


「ん?」


またしばらくすると、誰かが砂浜に座っていた。


少し近づいてみてみると、それは中学生くらいの女の子で、砂浜で絵を描いているよう。


「ねえ、その絵見せてくれる?」


なぜかそれに興味が湧いた僕は、その女の子にそう話しかけていた。


「え?ま、まだ完成してないんですけど……」

「うん。別にいいよ。ただの好奇心だから。」


僕がそう言うと、女の子は無言でそれを差し出してくる。


「ありがとう。」


僕はお礼を言ってそれを受け取ると、それを見てみる。


その絵は、鉛筆で描かれた、ここから見えるであろう朝日と海の絵だった。


「凄いね。これ、本当に完成してないの?」

「いえ。絵自体は出来てるんですけど、なんか海らしさが出てなくて、どうにかして修正しようとしてたんですけど………」

「ああ、なるほど。」


確かにそれが海だとわかるけど、その絵から海というイメージがわかない。

ただの綺麗な絵としか見えない。

うーんなんでだろう。


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