先輩、何でそこに気がついたんですか?
朝。
僕と先輩が家を出ると、既に三人とも荷物をもって待っていた。
「ごめん!待った?」
先輩が駆けだしながらそう言うと、会長が笑いながら首を振る。
「全然待ってないよ!」
「そうですよ!全然待ってないですよ。」
咲も会長の意見に同意する。
………何故だろう。昨日先輩たちが一緒に買い物に行ってから、女子達が仲良くなってる……先輩、会長にタメ口だし。
「夜空君……女性って怖いよね……」
そしてこっちはどうしてこんなに衰弱しきってるんだろ………
「大翔さん、すいません。昨日は女性達の中に一人放り込んじゃって。」
「うん。本当に大変だったよ………鼻血が出そうで。」
「……本当にすいませんね。」
いや、何があったんだ?
「で、夜空君、運転手の方はまだ来てないよね?」
「たぶんそろそろ来ますよ。」
「ちなみに誰が車を運転してくれるんだい?」
あ、そう言えば誰が送ってくれるのか言ってなかったな。
「僕のいとこですよ。」
「え?ここにも居るよ?」
「いや、大翔さんではなくて、父のほうのいとこです。」
「ああ、そっちね。どんな人?」
「見たほうが早いですよ…………あ、来ました。」
少し向こうから黒い某有名メーカーのミニバンが走って来て、家の前で停車する。
ドアが開き、中から僕よりも五センチほど大きい………僕は百七十八なので、百八十五近い男性が出てきた。
「え!?夜空君のお兄さんって………」
「先輩方~~運転手が来ましたよ~~」
なんか大翔さんが騒いでるけど、あえて無視する。説明するならまとめてのほうがいいし。
「分かった!!今行く…………へ?」
「!!?」
先輩がこっちに返事をして、こちらを振り向いて硬直。
会長は、そもそも言葉を発せなかった。
「あ、久しぶりです。」
咲は当然平常運転。まあ、当たり前だよね。咲から見てもいとこだし。
「ども。」
車から降りてきた従兄は、軽く片手を上げると、軽い返事をする。
「え?もしかして、深星の従兄って………「
バカップル二人の声が重なる。
飛葉天輝。
今売れている俳優で、今期主演をしたドラマは、『星空深夜』の主題歌の効果もあいまって視聴率が20パーセントを超えた……らしい。
一方、先輩はというと………
「あ、やっぱりそうだったんだ。」
「「え!?わかってたの?」」
またバカップルの声が重なったよ……仲良すぎでしょ。
「うん。だって口元が似てるじゃん。声は全然違うけど。」
「言われて……」
「みれば……」
「「似てるかも……」」
あれ?なんか今日一際仲良くないですかね!?そこのリア充のお方!
というか、なんでそこに気が付いたの!?先輩!!
「おお……そこに気がつくとは………それより、夜空は変わんねえな。身長以外は。また大きくなったか?」
「ドラマの時、一回会ったじゃん。」
「そうだったっけなぁ?覚えてねえわ。」
散々絡まれたのを僕は忘れないぞ………
精神が削られていったし…………
「で、早く荷物詰めよ。早く行こうぜ。」
「了解。じゃ、みんな、トランクに積んでね~。」
僕が荷物の一つを持つと、残りのメンバー(車椅子の咲は除く。)は、慌てて荷物を運び始めた。
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