先輩、なんで赤くなってるんですか?

「後でサインもらっていいですか?」


車の中で、唐突に先輩がそんなことを天輝に言い出した。


「いいよ~。夜空の彼女なら。」

「いや、違うからね?」


なんか勘違いしてるっぽいので訂正しておく。

この人は暴走するとやばいからなぁ………


「か、彼女?」


あれ?なんで先輩赤くなってるの?

戻ってきてくださーい。先輩。


「夜空…………かわいそうに見えてくるから認めちゃいなよ。」

「言ってる意味がわからないよ…………もうヤダ、この人。」


本当に何なの?この人。

調子狂うなぁ!もう!


「あれ?夜空君って天輝さん相手だとタメ口なんだ。」


大翔さんがそう後部座席から訊いてくる。


「確かに夜空君タメ口だね。珍しい。」


先輩も乗っかってきたな。


「ああ、クラスメートにも敬語使ってますからね。僕が天輝に敬語使わないのは『タメ口にしろ。さもなくばお前の小さい頃の写真ばらまくぞ。』って脅迫されてるからですよ。」

「あ、前にお兄ちゃんの写真欲しがってたのそれだったんだね。」


え?もしかして写真渡したの咲?

だったら僕は悪魔天輝に咲の写真渡しちゃうけどな?


「咲、もしかして渡しt……」

「あ!じゃあ、千雪さんもタメ口にしてもらえばいいじゃないですか!」


あ、話題変えて逃げたな。

まあ、あとで尋問おはなしするからいいんだけどね。


「わ、わたしはいいかな?」

「ええ~なんでですか?一気に距離が縮まりますよ?」

「でも………み、耳貸して。」


何故か赤くなった先輩は隣の席の咲に近づいて、耳元で何かを話している。

それを聞いた咲は、「はあ」っとため息をついた。


「それぐらいで恥ずかしいって言ってたらどうするんですか!?」

「ちょ!咲ちゃん?耳打ちした意味ないよね!?」

「そんなのどうだっていいんですよ!ほら!早くお兄さんに『タメ口で話して』って言わないと!」

「ええ~~まだ心の準備が………」


いや、先輩と咲で盛り上がるのはいいけど、僕は一言もタメ口で話すなんて言ってないですからね?

咲、僕は先輩にはタメ口で話したくないからね?

もう少し僕の気持ちを尊重してほしいなぁ………

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