夜空君、なんか言った?




「お疲れ様。それと、荷物運んでくれてありがとう。」


夜空君は、見るからに疲労しきったという感じで、わたしの部屋に膝をついている。


「つ、疲れました……」


夜空君はそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。

ここまで疲れ切ってる夜空君も珍しいなぁ……


「先輩、すいませんが五時ぐらいまで寝ます……昼は適当に食べてください……」

「うん、本当に運ばせちゃってごめんね。」


夜空君はそう言うと、虚ろな目・・・・のままわたしに口元だけで微笑んでくる。


「僕が勝手にしたことですから……」

「待って。」


わたしがそう言っても、夜空君は聞こえていないようで、ふらふらとしながら部屋から出て行ってしまう。


夜空君……大丈夫かな……

最近はあの目・・・をしてなかったのに……










とりあえず、炊飯器に残っていたご飯をふりかけで食べた後、夜空君の部屋に行ってみる。


「夜空君の寝顔……初めて見るな……」


やっぱり寝てても夜空君は夜空君で、わたしの好きな人。

寝顔すらもかっこいいな。

でも……時々するあの、虚ろな、全てが抜けてしまったような目。

あの目をしてる夜空君は、なんか不安になるし、今にも壊れそう。




暫く夜空君の寝顔を見ていると、急に夜空君がうなされ始める。


その目は普段は見せない苦痛の表情で、すっごくつらそう。


「夜空君、大丈夫?」


そういって、少し揺すっても夜空君は起きない。


「夜空君、夜空君?」

「……き……」


え?いま、なんか言った?


「……咲、咲、咲!」


起こさなきゃ!

わたしの直感のようなものが働いて、わたしは夜空君を強く揺する。


「夜空君!!起きて、夜空君!夜空君!」


少しずつ夜空君の目が開き、焦点があっていく。


「お、おはよう…ございます。」


ああ、よかった。いつもの目だ。


「おはよう。大丈夫?なんかうなさせてたけど。」

「よくあるんで大丈夫ですよ。それより起き上がれないんですが……」

「ご、ごめんね!」


わたしが慌てて離れると、夜空君はベットから出る。


「じゃあ、ちょっと汗かいちゃったので、シャワー浴びてきますね。」

「う、うん。」


大丈夫かな?夜空君。

まだ疲れてるみたいだったけど……


そう言えば、咲って誰だろ、気になる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る