夜空君、すごい!



夜空君の作曲ってどんな感じなんだろう?

すっごく気になる!!

何がどうなったら、あんな曲ができるんだろう。


「ここが地下室です。」


夜空君はそう言うと、分厚い扉を開ける。

その瞬間、私の目に飛び込んできたのは、無機質な部屋。


音楽室みたいな壁に、大量の機材と楽器。本棚の中の本。

生活感はなく、見るからに『作業部屋』。


「すごい。」


思わずそんな感想が漏れてしまう。


「そんなことありませんよ。」


夜空君はそう言うと、わたしに椅子をすすめてくる。


「じゃあ、これから始めますんで、終わるまで話しかけないでくださいね。たぶん変な返答するので。」


何?変な返答?

すごく気になるけど、邪魔したら悪いよね。


夜空君は、ギターを持つと少し弾く。

すると、パソコンを少し操作する。


暫く目を閉じて、静止。




「フン、フフフーン、フ、フフー……………………………あ……す……………海……星明り………冴えず……色を……昇る陽…………続く…を……………話をしている…………華麗……ソーダ…………目眩、閑古鳥…砂………………眩しい………似ている…………………………と…雪の世界…銀………………アイオライト………花…華…………ワルツ……………あるがまま………宇宙を………に………手から思い出が…………………燃える…塔……ガーネット……………人が………闇を……………導かれ、蔑まれ……今……………繋がる螺旋………無限に、永遠に、ずっと…………ずっと。」






凄い……


そうとしか言いようがない。


夜空君の口から出た言葉は、一見無造作で、何もない。

でも、その言葉は聞いている人に、ぼんやりとしたイメージを持たせる。


『星空深夜』の曲の数々。

彼の曲は心に問いかけてくる。


――何を考えるのか。

――何のために生きるのか。

――あなたにとっての正義とは?

――人生に正解はあるのか。


そんな、答えのない問。

彼の曲を聴くと、自分の心に向き合わされる。


そうして、人に答えのない問いの、『答え』を。彼なりの『答え』を歌う。

それが彼の歌。

聴く人によって見えるイメージが大きく変わる。青でも、赤でも、緑でも、白でも、黒でも、灰色でもない。そんな歌を彼は作る。


今夜空君が持っているのは、輝く前の原石。

それを、彼は少しずつ加工して、鎖をつけて、アクセサリーを作る。

そうして、そのアクセサリーを聴いた人に付ける。

まるで、曲を聴いた人を試すように。

『あなたならどうする?』と問うように。

『星空深夜』の、『深星夜空』の作る歌はそんな歌。


見る見るうちに、原石は磨かれていく。




「さあ、泣いて 手を繋いで どうにもならないなんて 悲しいことを――――」




すごい、もうできてきてる。

けど……



「「足りない」」



わたしの呟いた声と夜空君の歌声が重なる。




「思い出を 欠けた 記憶を――――」




ただの偶然。歌の詞と、たまたま重なっただけ。

でも………


夜空君の、『星空深夜』の世界に少しだけ触れた気がする。


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