先輩、何でですか?
「先輩、それよりもお風呂沸いてます。先に入ってきてください。僕は食器とか洗ってますから。」
「りょーかい!じゃあ、もらったもの片づけてから入るね!」
うん。すっごいご機嫌だ。
先輩の表情筋の全てがそう言っているのがわかるってくらいの満面の笑み。
……やっぱり先輩はかわいいなぁ。
先輩の開けていったリビングのドアを閉め、テーブルの上の皿を重ねて運ぶ。
何で先輩は『深夜』のファンになったんだろうか……
なんとなく、僕の中の『深夜』と、先輩から見える『深夜』に違いがありすぎる気がする。
僕の中での『深夜』は、嫌いなものから逃げて、好きなことだけをしている自由人。
でも、たぶん先輩の中の『深夜』は違うのだろうな。
……まあ、どう思ってくれててもいいんだけど、先輩には、本当の『深夜』も見てもらいたいと思う。
でもなぁ……それをすると、『あの事』も話さないといけないんだよな。
『あの事』に関しては、まだ全然整理がついてないから、まだ話せないし………
「はぁ……どうしよ……」
そう呟いたところで、何も変わらない。
ただ、悩んでるということを、再度自覚するだけ。
……もういいや、めんどくさい。機会があったら言えばいいか。
そう結論を出したのと同時に、洗い物が終わり、することがなくなってしまった。
まあ、ぼんやりしてればいいか。最近(先輩のせいで)忙しかったし。
「夜空くーん!あがったよ!!」
先輩の声で、想像の世界に入っていた僕の意識は現実に戻される。
リビングに入ってきた先輩を見ると……
ちゃんとした服を着ていた。髪は濡らしたままだけど。
「先輩、よかったです。ちゃんと服着てて。そのパジャマ、ピンクでかわいいですね。似合ってます。」
「そ、そう?ありがとう!えへへ、うれしいな!!」
やっぱり機嫌が良いな。
照れたのか、少し赤くなった先輩もかわいいしね。
「じゃあ、髪を乾かしちゃいましょう。」
「りょーかい!!」
洗面台の前に椅子を持ってきて、先輩の髪をドライヤーで乾かす。
「前も思ったけど、夜空君って髪乾かしたりするの上手だよね。」
「まあ、人の髪を乾かす機会がありましたから。」
「あ、もしかして妹さん?」
「そうですよ。よく世話をしてましたからね。」
「ふうん。今何歳なの?」
「中学二年生なので……十三歳ですね。」
「どんな感じ?」
「性格とかですか?うーん……真面目で、結構クールなところがありますね。他人には。」
「他人には、ってことは夜空君とかには違うの?」
「まあ、僕に対しては結構甘えてきますね。」
「かわいい?」
「はい、かわいいですよ。妹ですから。まあ、兄妹であることを差し引いても、相当かわいいと思いますよ。」
確か相当な数のラブレターをもらってたなぁ………本当にかわいいから心配にはなるけど、護衛従妹が一緒だから大丈夫だろうな。彼女、相当強いし(肉体的に)。
「ふーん。夜空君に似てる?」
「まあ、似てるとはよく言われますね。自覚はありませんが。」
「そっか、じゃあ相当な美人さんだね!」
「その基準はよくわかりませんが……はい、乾きましたよ。」
「ありがとう!夜空君もこれからお風呂入るの?」
「いえ。僕はこれから仕事をするので、終わってから入ります。」
「ふうん……」
先輩はそう言うと、少し考え込んでしまった。
先輩が考え込むときはたいてい僕にとって良くない結果になるからな………
「ねえ、仕事って何するの?」
「次のアルバムに収録する曲を創ります。」
「じゃあさ、それ、見学させて?」
えぇーー、すっごくめんどくさい予感しかしないんですけど。
「………何でですか?」
「だって、気になるじゃん!夜空君どんな風に曲を作ってるのか!」
「えぇ………」
どうしよう……まあ、仕方ないか。こうなったら先輩はこっちが許可するまで止まらないからな。
「まあ、良いですよ。でも、基本放置ですが、それでもいいですか?」
「うん!むしろ、気を遣われると悪いしね。」
じゃあ、見学したいとか言わないでくださいよ……
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