先輩、恋人でもないのにいいんですか?
暫く抱き着かれていたが、先輩が離れたので終わりとなった。
いつも先輩が抱き着いてくるときも先輩のタイミングで終わるので、今日も平常運転だ。
……いや、抱き着いてくるとか、恋人でもないのに、良いのかなぁ?
ま、僕が損してるわけじゃないし、いいかな。
「じゃあ、今度こそ着替えるので、リビングに行って……いえ、手を洗っておいてください。」
「なんで?」
「ご飯作るので。先輩にも手伝ってもらおうかと思ったのですが……」
「りょーかい!洗って待ってるから、早めに来てね!十分以内!!」
「そんなにかかりませんよ。」
そもそも、男の着替えはそんなに時間はかからないし。昨日の先輩じゃないんだから、十分もかかりませんよ。
「じゃ、さっそく作っていきましょうか……とはいっても、刃物すら使わないのですがね。」
「何作るの?」
エプロン姿の先輩がそう話しかけてくる。
似合っている。
先輩の魅力に、もはやそうとしか言いようがない。
「今日はホットケーキにします。」
これなら、いくら家事出来ないといっても、食べれない仕上がりにはならないはず!
焦がすかもしれないけど。
まあ、刃物を使わないので安心ではあるね。
「じゃあ、まずは材料をそろえましょう。」
「おー!!」
そう言いながら、先輩にホットケーキミックスの袋を渡し、材料を自分でそろえさせる。
さあ、先輩の家事できないはどのレベルなのだろう。
「「いただきます」」
そう言って僕たちはホットケーキを食べ始めた。
まずは恐る恐る一口食べてみる。
見た感じそんなに悪くはなさそうだけど……
あの先輩の言い方的に、相当家事が苦手なのは間違いないと思う。
……………
……………
……………
……うん。
可もなく不可もない。普通のホットケーキだな。
「ど、どう…かな?」
「おいしいと思いますよ。料理はそんなに下手でもなさそうですね。」
この普通具合なら、練習すればした分だけできるようになる気がするけど……
本当に家事出来ないのかな?
「先輩、本当に家事出来ないんですか?」
「うん……電化製品さわると何故かすぐ壊れちゃって……」
それは家事が出来ないというか、レベルがカンストした機械音痴なのでは?
あれ?でもうちのコンロ電気の奴なんだけど……大丈夫だったよね?
「うちのコンロは壊さなかったじゃないですか。」
「夜空君が間違いそうなときに教えてくれたからできただけで……」
「スマホも使えてますよね?」
「すっごく頑張って覚えたし、機能のせいげん?とかもしてるから。」
ああ……なるほど。
つまりレンジとかも使えないし、暫くは僕がいないとコンロもダメ…と。
「まあ、スマホが使えるようになるんなら大丈夫でしょう。夕ご飯の時も練習しましょうか。」
「うん!おねがいね!」
「大した労力ではないので、任せてください。」
まあ、本当は結構大変なのだけれど。
夕飯ということは、どうしても包丁を使わないわけにはいかない。
すると、先輩のきれいな手が傷つかないように細心の注意を払う必要がある。
つまり、通常では考えられないほどの集中力を要するということ!!
要約すると、疲れるし大変。
でも、それを先輩に言うと百パーセント落ち込むので言わないことにする。
「じゃあ、買い出しに行かないとね!!」
「先輩、今日の分はあるので、今日は先輩の課題をしましょう。」
「え?」
僕の言葉に、先輩は固まる。
そうして、「何言ってんのこいつ」的な目で僕を見てくる。
「じゃあ、一つ言うことを聞くって約束を使って……」
「いいですけど、どうせ後ですることになるんですから、ここで使うのはどうかと思いますよ。まあ、どうでもいいことに使ってくれた方がありがたいですが……本当は明日、先輩と外で昼食をとったりとかした後で買いに行こうと思っていたんですが……まあ、言うことを聞かせる権利を使われてはしかたな……」
「やっぱり使わないでおくね。勉強見てくれるの?」
僕の作戦勝ち。
今日はあり得ないくらいに暑いらしいので、意地でも外出したくなかったからね。
「ええ、最初から勉強は見るつもりでしたからね。」
先輩は元の頭は悪くないみたいで、高校一年生のところまではできているので、結構教えるのは楽だから、労力にはならない。だから、暑い中出るよりはましだ。
そんなこんなで、僕と先輩の勉強会(僕が教えるだけ)が始まった。
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