先輩、気が付いていませんでした!



センタク?シタギ?


………………

………………

あああああああ!!!!!


「先輩!」

「な、なに?」

「すいません!!!そんなこと気が付いていませんでした!!!」

「へ?」


土下座する僕と、困惑する先輩という、傍から見たらシュールすぎる光景だが、僕たちは本気だ。


「だ、だって、普通は気が付くよね?」

「実は、一人暮らしする前は僕が家事をすることが多かったんですよ……で、妹の下着とかも普通に洗ってましたので、大した違和感もなく……」

「そ、そうなんだ……」


何とか誤解は解けたかな?

そう思って先輩を見ると、真っ赤になったままこちらを見ていた。


「忘れてはいないでしょ?」

「………黙秘権を行使します。」

「ダメ。」

「………はい。」

「じゃあお詫びに一つ言うことを聞いて?」


こんなにもNOと言えない質問文は人生で一度もなかった。


「わかりました。それくらいでよければ。」

「ホント?よし!」

「で、先輩の洗濯物はどうすればいいんですか?」

「へ?」


先輩は僕のほうを見て、キョトンとした顔をする。

よし、ささやかな復讐兼必要事項の確認は成功だ!!


「いえ、見ずに洗濯……とはいきませんし、かといって洗濯するたびに言うことを聞かされては身が持ちませんからね。で、先輩が自分の分は自分で洗濯してくれるんですよね?」

「え?ちょ?え?」

「ね?どうなんですか?先輩?」

「夜空くん?え?ええ?」


あ、ちょっと涙目になってきた。

これが、自分が楽できないから涙目になってるとかならこのまま攻めるんだけど……先輩は本気で家事が苦手(全くできない)なので、これ以上はやめておこう。

涙目の先輩も可愛いのだけれど……って、僕もしかしてドS?

いや、僕はノーマルだ……たぶん。


「先輩、嘘ですよ。僕はただ先輩から洗濯の時に下着を見ても怒らないって許可をもらいたいだけですから。」

「え?それって……」

「僕が先輩の分まで洗濯するので先輩は心配しなくていいですって意味です。」

「ち、違くて、その…それをお願いしたら、言うこと聞いてくれるってのもなくなっちゃうんじゃないかな?って…思って……」

「……ああ、そのことですか。それに関しては先輩の許可なく触った僕に責任がありますから。有効のままでいいですよ。」


一瞬無効にしてもらおうかとも思ったけど、それはなんか違う気がしたので、やめた。


「いいの?」

「はい、良いですよ。」

「本当に?なくなっちゃわない?」

「なくなりませんよ。」

「ありがとう!!夜空君大好き!!!」


うん。恋愛的な好きとは違うってわかってても、うれしい。

先輩が抱き着いてきて、完全に役得だと思う。

詳しくは言わないけどね。


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