先輩、言ってほしかったんですか?
――チュンチュン
僕は名前の分からない鳥の鳴き声と、近くに感じた気配で目が覚めた。
ゆっくりと目をあけると、目の前に何かがあった。
暫く焦点が合うまでぼんやりしていると、段々と焦点があってきて、目の前の何かがはっきり見えてきた。
透き通るように白い肌。どちらかと言えばかわいい系の顔立ち。
少し茶色っぽいサラサラの髪。
目に前に居たのは、少し頬を赤く染めた先輩だった。
「おはようございます。」
僕は努めて平静を装ってそう言う。
「うん。おはよう。」
「………」
「………」
「………」
「……ん?」
しばらくそのままでいると、急に先輩が首を傾げた。
「今日は『それより起き上がれないんですが……』って言わないのかなぁって……」
「言ってほしかったんですか?」
「い、いや、そう言うわけじゃないんだけど……」
先輩の言っている意味が解らないのは、先輩の言っていることがおかしいのか、僕が眠いせいなのか……
いや、これは先輩のせいだろう。
「じゃあ、起き上がれないのでどいてください。」
「りょーかーい。」
そう言うと、先輩は僕から離れる。
いや、なんだったんだ?
「じゃあ先輩、着替えてから朝食作りますので、ちょって部屋から出てもらえますか?」
「いいけど……もう昼だよ?」
「へ?」
慌てて時計を見ると、時間は十一時半。
完全に寝すぎだ。
「すいません先輩。朝食どうしましたか?」
「食べてないよ。わたしもさっき起きたところだから。」
それならよかった。
てっきり、起きてたのに食べてないのかと……
「それよりさ、料理、教えてくれない?」
「……勉強のほうが先では?」
「うっ!そうなんだけどね、ほら、夜空君が何か用事があるときとかにわたしも作らないといけないし……」
「まあ、確かに必要ですね。……わかりました。面倒ですが教えましょう。」
「本音漏れてるよ?」
本音を漏らしてるんですよ。先輩。
「面倒なものは面倒なので。まあ、先輩が作れるようになれば家事の分担もできるようになるので。他の家事に関しても教えますね。」
「家事って、わたしできないよ?掃除洗た……」
そこで先輩は何かに気が付いたのか、固まる。
そうして、顔を真っ赤にし始めた。
「え?ちょ?え?」
「先輩?どうしたんですか?」
「ひゃ!!」
先輩は何故か慌てていたが、僕が先輩に話しかけるとかわいい声をあげる。
「よ、よ、よ、夜空君!」
「はい?」
「み、見たってこと?」
「何をですか?」
いや、本当に思い当たる節がない……僕なんかしたかなぁ?
「し、し、し、」
「し?」
「下着見たでしょ!!洗濯の時!!」
………………
………………
………ん?
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