先輩、もうそれは確定なんですね?
「夜空君。」
「何ですか?冷める前に食べましょうよ。」
先輩がテーブルについてから、なんかそわそわしている気がする。
既に先輩は着替えており、ノースリーブの白いワンピース姿になっているので、僕も安心して見られる。
「なんで入っちゃったの?」
「ああ、朝に部屋に入ったことですか?」
「うん。」
ああ、やっぱりその話か。
「先輩、言わせていただきますが、僕が入らなかったら起きましたか?」
「うぐ!」
「それに、僕は先輩がズボンを穿いていなかったことしか見ていません。」
「嘘……ズボン
意外と覚えているものだなぁ……
どうしよう。正直言ってめんどくさい。
というか、この状況の打開策がわからない。正論で先輩が納得するとは思えないしな……
「で、どうしろと。」
「今日の朝のことは忘れて、ね?」
「先輩。僕の記憶力を舐めないでください。伊達に高校三年生までの教科書を暗記していませんよ?むしろ忘れたいことも忘れられなくて困ってるくらいなんですから。」
これはほんと。
記憶力って、ほどほどが一番だと思う。だって、嫌な記憶とかも残っちゃうんだもん。
「むう……じゃあ、買い物に付き合ってよ。」
「……何でですか?」
前回、先輩と買い物に行ったときは女性の下着のところに強制連行され、僕の羞恥心とかいろいろな物をガリガリ削られたから、正直言って嫌だ。
この先輩なら、悪夢再びの可能性があるし。
「だって夜空君、わたしの見たでしょ?」
「何を?とは聞かないでおきます。それ以前に、寝るときに薄着になるのは如何なものかと。せめて、見えないとこに隠しておいてくださいよ。」
「見たことは否定しないんだ…じゃあ、責任とってよ!!」
「嫌です。ほら、朝食冷め始めてますよ?」
話題を変えたい。
というか、むしろ僕のほうが被害者なのでは?と思い始めているのだけれど……
「だって……乙女のあれをみてそんな…」
「はい、僕はこのことを忘れる努力をする、先輩は深く考えない。これでこの話は終わりにしましょう。僕とて、先輩を論破したくはありませんからね。」
「ふーん。でも、昨日負けたよね?」
「先輩、相当論破されたいようですね……」
「ごめん!!この話は終わりにしよう!」
先輩はそう言うと、そそくさと朝食を食べ始めた。
ああ、論破か…懐かしいな。
前に先輩に対して暴言を吐いた今の三年生の集団約十名を論破して、逆上したところを、いとこの生徒会副会長の力を借りて二人でボコボコにしたのは懐かしい記憶だな……
あの時は確か、いとこの彼女(生徒会長)の悪口も言ってたし、タバコも吸ってたから協力プレイでボコボコにしたんだったなぁ……
懐かしい。二か月前だけど。
と、そんなことを考えている間に、いつの間にか朝食を食べきってしまっていた。
うーん。昔から考え事しながら食べちゃって、味わって食べれないんだよなぁ…。
この癖、どうにかしたいんだけど、治らないんだよな…どうしよ。
「ねえ、夜空君。この後、一回家に着替えとか取りに帰りたいんだけど、ついてきて、ね?」
「もうここに泊るのは確定なんですね。まあもうあきらめたので、いいですけど。」
というかもう既に、僕に拒否権は無い気がする……というか、ない。
「じゃ!わたしが食べ終わったらさっそく行こうか!早いほうがいいよね?」
「いいですよ。どうせ今日も引きこもりの予定しかなかったんで。」
先輩は、「じゃあ食べちゃうね」と言って、さっきよりも早めのペースで食べ進める。
ああ、荷物持ちになるんだろうなぁ……
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