先輩、お風呂に入る時は着替えの確認をしてください!



いま、先輩は風呂に入っている。


はあ…なんでこうなったんだろう…もう精神が持つ気がしないんですけど。

本当に先輩は僕の心を乱してくる。

まさか夏休み三日目でこんなことになるなんて…


「夜空くーん!助けて!」

「どうしたんですか!?」


バスルームからそんな声が聞こえてきて、僕はリビングを出てバスルームに向かう。

先輩は、髪が濡れたまま、扉を少しだけ開けて、そこから顔を出している。

ちらちら見える肩が艶めかしい。


「実はね…替えの服なくて……何か服、貸してくれる?」


ああ、なるほど…両親を見送ってそのまま来たから服がないのか…


「いいですよ。じゃあ何か適当に取ってきます。流石に下着はありますよね?」

「来るときにそれと明日の服は買ってきたから大丈夫。寝るときの服がないだけだから。」

「了解です。」


僕は階段を急いで上がり、クローゼットからTシャツと、動きやすそうなひもで結ぶタイプのズボンを取り、部屋を出る。


「先輩、ここに置いておきますね。」

「了解!」


僕はバスルームの前に着替えを置くと、リビングに戻る。


五分ほどすると、先輩がリビングに入ってきた。


「上がったよー。」

「わかりました。」


僕は特に深い意味はなく、先輩のほうを見る。


「!!!!!」


先輩は、僕の渡した服を着ていたが、サイズが全然あっていない。

濡れた髪、風呂に入ったせいか赤くなっている頬。襟元から見える鎖骨。

ヤバい。可愛い!


「?どうしたの?」

「い、いえ、何でもありません。」


やば、今見とれてた気がする。


「先輩、髪、乾かさないんですか?」

「?わたしいつも自然乾燥だよ?」

「髪いたみますよ?僕が乾かすので、こっち来てください。」


僕はそう言うと、ソファーから立ち上がり、洗面所に向かう。

先輩を椅子に座らせると、ドライヤーで先輩の髪を乾かしていく。


「先輩。もしかして、先輩がショートにしてるのて、乾くの早いからですか?」

「うーんそれあるかな?」

「も?ということは他にも?」

「あるけど、夜空君には秘密かな?」

「そう言われると気になりますね。はい、乾きましたよ。先輩、相変わらずのきれいな髪ですね。」

「そ、そうかな?ありがとう!」


あれ?なんか先輩の顔が赤い気がする。

あ、褒められ慣れてないのか。先輩友達少ないらしいし。


「じゃあ、僕は風呂に入るので、先輩は先に部屋で寝ててください。」

「りょーかいです!」


先輩はそう言うと、洗面所から出ていく。

じゃ、僕も今日(主に夜十時以降)の疲れを癒すとしますか。











僕が風呂から上がると、リビングに人の気配がした。

リビングに行ってみると、先輩はソファーですやすやと寝ていた。

何となく起こすのはかわいそうになってくる。


「はあ…力ないんだけどなぁ…」


僕は仕方なく・・・・先輩を横抱き…つまりお姫様抱っこする。


――ふわり。


先輩から女の子特有の甘い匂いがしてくる。

まあ、先輩はよく抱き着いてくるから、慣れたといえば慣れた匂いではあるのだけど。


僕はどこかにぶつけたりしないように慎重に運ぶと、何とか客室…今は先輩の部屋である一室に入る。


僕は先輩をベットに寝かせると、夏なので熱くないようにエアコンのスイッチを入れ、二十二度に設定する。


「…むにゃむにゃ……好き……」


先輩はどんな夢を見ているのだろう。

好き…か。

先輩にそう言われる人は、誰なんだろう。

僕だったら嬉しいな。


「おやすみなさい。千雪先輩・・・・。」


僕はそう言うと、扉をそっと閉めた。

ふう。明日からどうなっちゃうんだろうか。


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