彼女達の夢


 家のリビングにいた。

 いつもの見慣れたテーブル、ソファ、テレビ。

 ソファの上に寝転がっている人影。

 ともちゃん。

 短くてタイトなスカート。ともちゃんがよく穿いてたやつだ。

 彼女の足が動き、こっち側に向けた足を少しづつずらしている。

 ともちゃんの太ももが開いていく。

 俺を見て微笑んでいる。

 いつもと様子が違う。

 ぼんやりとした、どこか媚びるような視線、白かった彼女の頬が少し赤い。

 彼女は普段こんな顔はしない。

 だけど、ともちゃんのこの顔は以前に一度だけ、どこかで見た。

 ここだ。

 このリビング。

 このソファの上。

 足が勝手に動いて彼女に近づく。

「星村君」

 違和感を感じた。ともちゃんは俺のことを勇舞と呼ぶ。

 気がつくとソファの上にいたのは代峰さんだった。

 ともちゃんと同じ姿勢、服は学校の制服だった。二人は髪の長さも顔の雰囲気もよく似ていた。

 表情もそっくりだった。

「勇舞」

 またともちゃんに変わっていた。

「星村君」

「勇舞」

 ともちゃんと代峰さんが何度も入れ替わる。

 この女は誰だろう。

 どっちでもいいや。

 彼女の上に覆いかぶさろうとした。

 その瞬間、彼女の体が真っ赤になった。

「痛い」

 全身が赤く、所々に白い肌が見える。

 裸の彼女は血だらけだった。

「助けて」

 顔と声が入れ替わりながら、血まみれでしがみついてくる。

 もう彼女は笑っていなかった。

 逃げようとするが体が動かなかった。

「勇舞、痛い」

「星村君、助けて」

 ブーン、と唸るような音がする。

 彼女と俺はいつの間にか兵士達に囲まれていた。

 皆、一様に同じ仮面を被って槍を持っている。

 耳障りな音を発する兵士達は槍を彼女に突き刺す。

「痛い」

「助けて」

 次々と刺され彼女の体はハリネズミのようになっていく。それでも兵士たちは刺すのをやめない。

「勇舞」

「星村君」

 血で染まった顔に虚ろな目で彼女が俺を見つめる。

 やがて兵士達の槍が俺に向いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る