エピローグ
時は過ぎた。
ラミエル皇太子の立太子式には十を超える関連諸国の首脳が一堂に会した。国母となったミクとその夫ミラケルはあくまでサラエル王の側に控え、ナン大国大統領と楽しげに雑談をしていた。ナン大国から輸入したジャガイモとトウモロコシの安定した生産に成功したことに感謝するとともに、これからの一層の親交を約束していた。
ニニ国からは代表が来ていた。一年の大半を雪で閉ざされるようになってしまったニニ国はもはや国とは言えず、数少ない住民を治める者はこれからは自治領の首相として扱われる。
共和国からも首相が来ていた。にこにことしているが内心は複雑だろう。自国の国力は数々の内戦や侵略戦争で疲弊しており、よりによって王国から支援を受けることになってしまった。王国からの技術者を受け入れ、代替作物の開発もしているが、その技術者とはミラケル王弟の邸宅で働く元孤児である。
原始の砂漠を越えた地からも使者が来ていた。その人はけも耳だった。荒廃した土地に木を植え続け、緑化に成功したというのだ。
式の途中でミクは席を外した。母体への影響を考えて短時間の出席に留められたのだ。
その二か月後、ミクは第二子を出産した。
ラニャと名付けられたその子は、原始の砂漠を越えてけも耳の血を繋いだ。
ラミエル皇太子はやがて国王の座を引継ぎ、貿易国家として王国をさらに発展させ共和国との関係も改善させた。ルミディア王国中興の祖と呼ばれることとなる。
ミクは時を経てこう語り継がれる。彼女がいなければ大陸が困窮していただろう、と。
(了)
【PV1000ありがとうございます】けもみみは伊達じゃない 春瀬由衣 @haruse_tanuki
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