七:孵化

 この世界を動かす力の一つに、霊気マナと呼ばれるものがある。

 どのようにして生じるものなのかは定かでない――解明しようにも、人族の発達していない技術では確かめる術も道具もない――が、とにかく霊気という要素エレメントがあり、あらゆる物はこれを取り込み、そしてそれを操ることが出来た。

 ところで、ある短い時間の間に取り込める霊気の総量が最も多いのは、それらの塊のような存在たる上位存在かみがみ。神なる龍から派生した神格のない竜種ドラゴン。次いで多いのは、意外にも人間ヒューマンである。それ以外の人族、例えば植物の妖精と人間が交わった末裔すえである森霊人エルフや、獣を守護する神が人を孕ませた末に生まれた獣人ビーストフォークなどは、瞬間的な霊気の取り込み、という点に於いては普通の人間オリジナルに一歩劣っていた。

 しかし。霊気を取り込める総量と、取り込んで留めていられる時間の長さで言えば、人間は大きく後れを取る。短時間で多くを取り込み短時間に解き放つ、その火花か川にも近い不安定な性質は、むしろ人間に安定と繁栄をもたらした。

 それもそのはず。霊気という要素エレメントの持つ性質は変化。一所に長く留まることで、留まったものの性質を変える力だ。霊気のそんな性質は新たな進化の原動力である一方で、あまりにも長く霊気を留め置いたものは、時に世界の均衡を揺らがす災厄へ変化してしまうこともある。

 大量に溜め込まれた霊気によって危険な方向へ進化し、災厄と認められたものを、人は魔物まものと呼び——数ある魔物の中でもとりわけ恐れられるのが、チハヤが今対峙している灰狼かいろうであった。


〈Grrr……aaaAAAOoooowwww――!!〉

「うわわっ、この野郎っ!」


 高らかな咆哮の直後、虚空に現れて頭をぶち抜こうとしてきた白光の槍を、チハヤはコンパクトな爪先回転でかわした。

 灰狼の厄介な点は、進化の方向性が知能――それも、奸計謀略の方面に向いていること。

 その知能の高さは、獣の形をしながらにして術を行使できる、つまり上位存在かみがみと交信できるほどだ。常界の神性はこれに加護も庇護も与えはしないが、異界の神性の中には彼らの言葉に煽られ、或いは単に興味を引かれてこれに力を与えてしまうものも少なくない。今し方器族の頭を砕こうとした三本の槍もその一つ。閃哮ライトニングハウル、その名で知られるこの陽光召喚の術は、何を隠そう異界の太陽神の加護を受けた証であった。そも、闇霊人ダークエルフから灰狼の姿に転変したことも、輪廻転生を司る神の恩恵である。

 ともあれ。そうした理屈っぽいことを、今の狩人が考える余裕はない。爪先を捻って陽光の槍をやり過ごしざま、チハヤはつがえていた三本の矢を解き放つ。弩弓じみた大弓から打ち出されたそれは、先程術を使った三頭の灰狼の頭蓋を割らんと突き進み――当たる直前で不可視の壁に弾かれ、

 ない。


「GrraAa,g,gw,,w……」


 複雑精緻に組み上げられた結界術をあっさりと抜け、黒焼きの鏃が右眼から頭蓋を割り、脳幹を破壊して反対に突き抜けた。自信満々に展開した結界をいとも簡単に貫かれ、そのまま頭部を破壊されて、何が何だかわからないと言った風に呻きながら魔物が倒れていく。

 何も矢の勢いや頑丈さで強引に突き破った訳ではない。術の脆弱性――精密に陽光の隙間、結界の網目の間に矢を通しただけだ。神性と交信出来ぬから、不可視の術を視認出来ぬからと編み目にされるとは見下されたものであるが、相手の弱点を見抜くのは狩人にとって必須の技術であるし、見抜いた弱点へ精確に打ち込む射撃の腕もまたそうである。この程度ならば上位存在ともだちの力を借りるまでもなく、玉龍山の狩人なら誰でも出来ることだ。

 故に、チハヤにとっては何ら誇ることでも驕ることでもなく。先頭に立っていた灰狼が斃れたことを確かめたチハヤは、すぐに次の矢をつがえて放った。

 矢弾の数にものを言わせて撃破と威嚇を繰り返し、灰狼との距離を一定に保ちつつも、押し戻すことは出来ず防衛線をじりじりと下げていく。いくら才気溢れる若人とは言え、たった一人で、しかも本来は待ち伏せて狙い撃つタイプの戦法を得意とする狩人に、狡猾な灰狼を三分間抑え続けろというのは難しいものがあった。

 だから、チハヤは一人ではない。


ッ!」


 じわじわとチハヤとの距離を詰めていた灰狼、その鼻先を、何の変哲もない石ころが打ち砕く。一斉に青い眼が見上げた先は、露店の屋根。簡易な枠に革や布を張っただけの不安定な足場に平然と立ち、気だるげに次弾装填済みの投石紐スリングを振り回しているのは、古びた地球儀頭の隆々とした老爺――チハヤの祖父、東矢トウヤだ。

 あらゆる弓術を一通り修めていると言っても、狩人ごとに得意なものは違う。器用なチハヤは目標までの障害の綻びを突いて相手に届かせる精密射撃が得意であるし、膂力のある祖父は障害ごと相手をぶち抜く剛射と速射に長ける。そしてこの場にいない父親はと言えば、


「Ghaoow,w,g,,! g,gahh,,!,?」


 そもそも障害を発生させない。完全な意識の外から敵を一方的に打ち砕く、隠形と長距離射撃の名手であった。

 屋根から屋根へ伝いながら祖父が狼どもの鼻っ柱を叩き折り、その隙を埋めるように何処とも知れぬ遠くから父が後ろから群れを屠り、それらに気を取られている隙に息子が頭蓋を撃ち抜いて数を減らす。実に鮮やかな手並みによって、灰狼は瞬く間に数を減らし、戦線は再び押し込まれようとしていた。


 しかし。

 詭計きけいの獣として畏れられる灰狼が、かくもあっさりと滅されるはずもなく。


「……!!」


 状況を睥睨へいげいしていたトウヤにだけ、それは見えた。


 ――己の息子が、矢来ヤライがいるはずの村外れの物見櫓。それが、真っ黒い影のような竜に踏み倒されているさまが。

 ――その竜の牙に、愛すべき子が捕らえられているさまが。


 身体が固まる。硬直してはならぬ時に。

 ヤライが遠弓を得意としたことが仇となってしまった。器族の脚で全力疾走したとしても、到底助けに行ける距離ではない。救助に走ったとして、見たこともない黒龍に矢を通せる保障など何処にもない。だが、そんな機械的な理由で子を切り捨てられるほど、この老爺は親として冷酷ではなかった。

 その情愛すらも、灰狼は貪欲に、何処までも悪辣に利用する。

 狙っていたのだ。息を吐かせる間もなく、上から一方的に石を叩き付けてくるジャマモノが、後方の異常に気付いて手を止めるその瞬間を。


「うわ、ッ……!」


 絞り出すようなチハヤの声が、遠くの悲劇に釘付けにされていた意識を引き戻す。その視界は、我先と襲い掛かってくる狼を辛うじて近寄らせないよう奮戦するチハヤの姿を捉えていたが、最早視覚情報などどうでも良かった。息子の危難に鈍った狩人の嗅覚はそれでも鋭く、目で見るより先に死のにおいを嗅ぎ取っていた。

 全力で屋根の枠を蹴る。不安定な枠は隆々たる肉体の質量に耐えきれず倒れてしまったが、構わない。上空から低空に向かって自身を射出し、その場に足を留めるので精一杯だったチハヤに思いっきり肩から体当たりタックルしようとして、直前で切り替える。

 即ち。突き飛ばす威力を上げようと縮めていた腕を伸ばし、チハヤの頭と背を護るように強く抱き締めたのだ。それが一体どういう意図によるものか、当のチハヤは気付いていたはずなのに、一瞬意識へ上げることが出来なかった。

 突然猛攻を仕掛けてきた狼の血眼に、己を抱く祖父の決死の形相。それらを上手く接合できず混乱した意識と、それに引き摺られて固まった身体は、トウヤが無意識のうちに計算していた勢いを僅かに減殺した。

 そう、ほんの僅かだ。普通なら誤差とも思わないだろう。

 だがその誤差が、今に限っては明暗を分ける。


「爺――」


 チハヤが祖父を呼ぼうとする声が、視界を塗り潰す白い光と、雷鳴の如き轟音に掻き消え。

 道幅一杯に放たれた特大の閃哮ライトニングハウルが、チハヤの右腕を掠めて村の外まで突き抜けた。



 老翁の動きは早く冷静だった。

 退かしそこなった。そのことを肉と血の焦げる臭いから察したトウヤは、自身の背で吹き飛んだ衝撃と熱気を受けるなり起き上がった。拘束具のように固定していた腕を解き、孫の姿を検める。

 理不尽に強力な熱線が掠めたチハヤはショックで気を失い、その右腕は、二の腕の半ばから奇麗に消し飛んでいた。切断面は炭化して脆くなり、浅い呼吸に合わせてぼろぼろと剥がれ落ちる。そして当然、傷口を塞ぐものが無くなれば出血もするわけで、溢れ出す血が背にまで広がって背嚢を汚していると気付いた彼は、迷うことなく己の衣服の袖を引き千切った。

 肩口と切断面の中間に細く裂いた布を巻き、きつく縛り上げる。次いで手近な木切れを結び付け、ぐるりとひと捻り。元から強く圧迫していた布が食い込み、堰を切ったように溢れていた血が止まる。これで少しは持つだろう、と冷静な狩人の頭脳で結論を出すと同時、チハヤが意識を取り戻した。

 その一言目。


「熱、ぃ……ッ」

「何処がだ。言えるか」

「頭が、熱い……」


 違う、と勘が騒いだ。念の為、チハヤの地球儀の頭に手の甲を当てる。熱くなどない。むしろ血が流れ過ぎたせいだろう、氷のように冷えている。だが、チハヤは熱いの一点張り。精神的に不安定な者の主観と客観が一致しないことはままあれど、これほどの不一致は前例が無かった。

 器族は術が使えない。積み重ねてきた知恵と経験則の外にある事象に、彼等は無力だった。故にトウヤは、錯乱する孫を黙って抱いてやることしか出来ない。


「……クソッ、どうすりゃいいんだ」


 極大の光線が街路をぶち抜き、それを避けるために灰狼が射線から距離を取った為だろう、魔物どもは光条が放たれる前よりも遠くから器族じぶんたちを見つめており、戻ってくるまでには時間がありそうだ。しかし、息子は無事かどうかも掴めず、孫は利き腕と弓を失った上に精神的な均衡も危うい。肝心の己はと言えば、先程の特攻時に投石紐スリングを置いてきてしまい戦力にならない。

 幸い、村民の避難に必要な三分の時間は、先程の閃哮ライトニングハウルが飛んでくる前に稼ぎ終わっている。後は狩人が逃げればいいだけなのだが、気を失いかけた若者を背負った状態で走ったとして、追ってくる灰狼を振り切れるかと問われれば、そこまで脚は早くないとしか言えない。第一、先程のような極太光線がまた来てしまえば、チハヤ諸共蒸発してしまう。射線をこちらにずらす、という考えが浮かぶほど賢くないようで、道に出さえしなければ閃光の主は何もしないらしいのがせめてもの救いだった。

 事態は膠着しているように見えて、確実に悪い方へと進んでいる。百戦錬磨の狩人も、此処まで絶望的では笑うしかない。ははは、と乾ききった笑声を一つ、気がつかない内に上がっていた呼吸を鎮めんと、大きく息を吸い込みかけたトウヤは、腕の中から聞こえた声にそれを止めた。

 見下ろす。同時に、チハヤが呟く。


「俺、と……? っ、良い、それで良い。持ってっちまえ……」


 ――何かと、話している。

 何と? 分かるはずがない。いや本当は分かっている。だが信じられなかった。


「俺、は……千羽矢チハヤ。千枚の羽で、どこまでも飛んでいく矢――」


 

 

 、など。


 愕然とする前で、背嚢に入っていた龍の卵が、ぱかりと殻の破れる音を奏でた。


「でェえっ!? 今!? 今なんかァ!?」


 これに腰を抜かすのはトウヤである。まさかこんな絶体絶命の戦場のど真ん中で、しかも拾った当人が呆然自失している真っ最中に生まれ出でようとするとは!

 いくらなんでも間が悪すぎる。だが、一回始まってしまった孵化を取り消すことも出来ない。全く未知の危機に晒され大パニックに陥った老翁は、珍しく声を上ずらせに上ずらせてチハヤを叩き起こした。


「ぉ、お、おいっ! チハヤ起きんけェお前ッ! 飼い主ィ――っ!」

「!? え、ぁ、は!?……は?」


 自失状態から立ち直った孫に、声もなく卵入りの背嚢を指差して伝える。事情を説明するより実際に見た方が早い、そう伝えたいらしい祖父の慌てた様に苦く笑いつつ、チハヤは左腕だけで器用に背嚢を下ろして、中の卵を覗き込んだ。

 ――コツコツと、翠玉の内側から音がする。内包物で見えないはずの中身が、しかし僅かに残った透明な部分から透けて見えている。だからと言って形がきちんと分かるわけではないが、卵の中に入っているものなど、最初から決まっている。

 恐らくは爪で穴を開けようとしているのだろう、石と金属の触れ合う涼やかな音が響く。その様をじっと見つめながら、チハヤは消し飛んだ右腕の痛みも忘れて、渡し守が尻ポケットに突っ込んでくれた神器抜け毛を取り出した。

 投げ放てば必中貫通の影の槍、掲げ持てば絶対防御の影隠れ。畏れ多くも軽率に使ってよいと言う。ならば、今こそがその軽率を発揮するときだ。迷うことなく、己の視野から太陽を隠すように掲げ持てば、音もなくそれは陽光に焼き消えて――

 どぷんっ、と。泥に岩を投げ込んだような音一つ。チハヤと、それを抱きかかえていたトウヤの姿は、強い陽光を受けて地に落ちた影へと飲み込まれた。

 刹那の後に飛んできた極大の閃哮ライトニングハウルは、二人がいたはずの虚空を抉るのみ。


 ‡


「ほぇえ……影ん中ってこうなってんだ」

「おま……あちゃこちゃ大変な時に呑気なこと言いやがって」

「気を緩めるのも大事だって言ったの、爺ちゃんだろ」


 影の中は、光に溢れていた。

 淡い金銀の細かな星屑の中に一つ二つ、様々な色の大きな星が光る。時折横切る銀閃は箒星で、一際強く輝く大きな星は何処か遠くの恒星か。

 人間は星を神の宮と言い、耀く星の数だけ星神はいるのだと伝承する者も多い。実際星神の眷属は他の属性のそれとは比べ物にならないほど多数存在するが、人間の言う神の宮である星……つまり、神格を持った星など本当に一握りだ。実際は信じられないほど高温で燃える炎の塊であったり、逆に有り得ないほど冷えた氷の塊が、自ら光を発したり他からの光を受けているだけの現象に過ぎない。

 だが、そんな浪漫のない正論はどうでもいい。チハヤは素直にこの景色を綺麗だと思ったし、隣にいる頑迷そうな祖父も、空を見た途端掌を返して感嘆している。科学と芸術が何ら矛盾なく同居出来るように、仮令たとい星の正体が地獄のような極限環境の成れ果てであったとしても、地に落ちる星の光は変わりなく清楚で美しいものなのだ。

 そして。真昼に見る夜景に感動する間も、龍の卵の中から聞こえる音は大きく激しくなりつつあった。コツコツと爪で叩くばかりでなく、カリカリと引っ掻いたり、バタバタと中で暴れてみたり。外側が文字通り石のように堅いせいか、出てくるのにも時間が掛かっている。


「ほら、此処だ。頑張れ」


 何の気なしに、こんこん、と指で卵の上方を叩く。途端、彼方此方を引っ掻き回して暴れていた動きがピタリと止まり、チハヤが叩いた方を目指して猛然と殻をひっかき始めた。胡坐を掻いた中に収めた背嚢、その中でジタバタと暴れる卵を微笑ましく見ていたチハヤは……ふと、親鳥とヒナのようだと思う。

 ヒナが孵る時、親鳥は卵の殻を突いて割りやすい場所を示してやり、ヒナは親の呼び声を頼りに卵を割るそうだ。もしや仔龍もそうなのかもしれない。

 推論を立てたなら、実証しなければ気が済まないのが器族という種の面倒なところである。自分が今後の狩人生命も危ぶまれる重傷人とも忘れて、チハヤは堅い殻を叩きながら声を掛けた。


「こっちだ、こっち。もう少しだぞー」

「ぅぎゅぅー」


 中から返事があった。お、と思う間もなく、ガリガリとより強く引っ掻く音が数回響いて、とうとう銀の爪が殻を突き破る。

 一回。二回、三回。同じ穴を押し拡げるように鋭い爪が出たり引っ込んだりを繰り返し、遂には右の前脚が飛び出した。かと思えばすぐに引っ込み、今度はごつんがつんと頭をぶつけ始める。此処までくればもう僅かだ。後少しだ、とまた声を掛け、殻の薄そうな部分をこんこんっとまた突けば、中の仔龍はそこに向かって渾身の頭突きを繰り出し――

 ばこんっ、と無理やり木箱の蓋を開けたような音がして、卵の上半分が粉々に破砕された。


「んぎゅぅ〜」


 甘えるような声一つ、にょきんとタケノコよろしく顔を出すは、翠玉の殻を頭にくっ付けたままの、砂色の龍。

 知性の色を確かに含んだ、けれどもそれ以上にあどけない愛嬌のある顔立ちは狼にも蜥蜴にも似て、伸び出す琥珀の角はまだ短く、ぽってりとした子犬のような体格に反して一対の翼は貧弱。器用そうな三つ指の先に光る爪は鋭くも、ちょろりと伸びた牙はまだまだ乳歯と言った風情。

 そして、瞳。産まれながらにぱっちりと開いたその眼は、深い深い原生の森の色を湛え――右のほうの目は、それに加えて星を取り込んだようば眩い輝きが、虹彩一杯に散りばめられている。

 あの翠玉から産まれるのも納得の、惚れ惚れするような眼をした仔龍である。


「んぎゅ……んぎー、ぢー、いぃー」


 その仔龍、器族らの感動やら畏怖やらを置き去りに、何やら懸命に蜥蜴のような口を動かして練習していた。どうやらイ段の発音がしにくいらしい。折角の可愛らしい顔を珍妙に歪め、時折蛇のような二又の舌をぴらぴらと出して柔軟体操。もう一回。

 等々、次々に繰り出される変顔の数々。笑ってよいやら心配してよいやらで微妙な雰囲気を放つチハヤとトウヤの前、龍の仔は三度みたび舌をぴらぴらし、やにわに鼻面を上げてチハヤを見た。

 そして、親愛の情たっぷりに、一声。


「ちはやーっ!」

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