11話 情報について
電子に流れる様々な情報。彼が過ごしていた時代と今では持つ力がずいぶんと変わってしまった。良い話も悪い話も目の前をすべるように流れていく。私はどちらであろうと手元に形を残しておきたいと思ってしまい、紙の本を部屋に積み上げていく。インターネットで手軽に注文できてしまうことではあるけれど、実物の山に触れたいと思いある本屋に行く。その本屋はとても品揃えの良いところで、なんでも売っているような気がする。
彼は人混みを避けながら生活した。といっても今と昔では意味がまるで違う。日陰であったことが正当化されていく。
自死について考える時、生き延びた彼女の話を反芻してしまう。彼女の本当の暗闇なんて詳しく知らないというのに、何故だかとても近い世界を生きているような気がするのだ。
彼女自身がどう考えているかは分からないが、私は彼女が生き延びて本当に良かったと思う。同時にこれ以上苦しんではほしくないとも思う。この2つの感情は同時に成立するものなんだろうか?
痛いことは苦しいことであるはずなのに、おかしな世界にいるとそうでもないような気がする。彼女はもう痛いのは嫌だと言った。その話は擬似的に痛みを知らせた。
何もかも変わってしまった。私は彼の過ごしていた時代の話をうまく受け止められるとは思っていない。それでも話は進んでいく。
あと90日。
世界を終わらせるといった彼を追想し 鈴木夢眠 @yumemi_S
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