アンケリアス
第136歩: 願いを叶えて
ざらざら、さりさり。
足の裏を屋根にこする。絵本に出てきたお城とはずいぶん違うけれど、タンポポの綿毛みたいな屋根はかわいい。足ざわりは、砂っぽくてクセになる。あったまってる所と、ひんやりするところを足で探してさりさりする。
ウ・ルー中央区の旧王宮、弓形に弧を描く宮殿の両端にそびえる塔。その上がお気に入りだ。向かって右の塔がいい。なにより眺めがいい。街の隅々まで見えるし、空にぐるりと囲まれるのを何度も夢見てきた。
月は、太陽が眩しくて見えない。
──本当に邪魔ね。でも、夕暮れになれば少しだけ見えるの、ちゃんと知ってるのよ。
生まれ変わったばかりのお月様。
きっともうすぐ。いつかきっと。
ねぇ早く、早く願いを叶えて。
わたし、なんだってするわ。
王宮の塔から、少女は身を踊らせた。
高いところも好きだ。
飛び降りるのが、気持ちいいから。
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