7章

「で、どんな子なの?ケンちゃんの好きな子って。」

シャインは笑顔だが、昔してくれた純朴な笑顔とはちょっと違う笑顔だ。人の色恋沙汰が絡んでいるので面白がっているんだろう。少しニタついている。

「あー…。会社の後輩だよ。直属の後輩じゃないからそこまで親しい関わりはないけど。経理課の子だよ。」

「へー、何歳くらい。」

「うーん、シャインと同じくらいじゃないかな。それかチョイ下。」

「うわー、オマワリさーん、こいつでーす。この人7歳以下の女の子と付き合おうとしてまーす。変態でーす。」

「まったく…。対して面白くない冗談やめろよ。」

「えへへ、ちょっとはいいじゃない。分かるよ、実年齢の話でしょう。25歳くらいでしょ。」

「どっちにしろ、35歳のおっさんが25歳好きになっちゃ変態だろ。さっさと好きじゃなくなるから大丈夫。」

「えー、そんなこと言ったら加藤茶ってお爺さん、ド変態になっちゃうよ。数十歳下の女性と結婚してるんだもん。大丈夫、平気平気。」

「あの人はある意味変態なんだよ。そう思っておけ。ていうか知っている芸能ニュース古いな。」

そう言って星も出ていない都会の空を見上げた。都会の喧騒と電光に遮られてしまった美しい星たちはどこに消えてしまったんだろう。

「…私ね、こうやって現世を楽しめているけど、できない事だって沢山あるの。どんなに美味しいご飯見ても食べられない。寂しい夜を皆みたいに、寝ることでスキップすることもできない。ケンちゃん以外の人には見えないから、他にお友達を作って話すこともできない。…そして、好きな人が出来ても恋をすることもできない。だからね、ケンちゃん、生きているうちに出来ることやらないともったいないよ。傷つくのを恐れちゃったらダメ。死んじゃったら傷つくことさえ出来なくなっちゃうから。」

「うーん…。まぁ…。」

まぁ、の後にいつもの逃げ言葉、「考えてみるよ」も付けることができず、黙り込んでしまった。真剣にそのことについて考えた後、俺に説法を説いたのが見た目7歳の幼い女の子だと思った時に思わず噴き出してしまった。シャインはそれを見て、何がおかしいのって頰を膨らませて怒っていた。

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光の幻想と闇の現象 夕暮 景司 @cagetwilight

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