第6話
結局あの後すぐにゆうちゃんが迎えに来てくれた。
ゆうちゃんはすごく汗だくになっていて、息を切らしながら…
「無事でよかった。」
と、ただ一言だけ言って私を抱きかかえた。
『おめでとう』と言いたいのに、言いたくないこの気持ち。
『ありがとう』と言いたいのに、言いたくないこの気持ち。
『ごめんなさい』と言いたいのに、言いたくないこの気持ち。
様々な気持ちが浮かび上がり、どうすればいいのか分からない。
だけど、今だけはゆうちゃんから離れずこの時間が1秒でも長く続いてほしいと、ゆうちゃんの腕の中で願っていた…
<次の日>
「あーちゃんっ!おっはよーって、どうしたの!その目は!!!」
教室について早々陽菜が私の方へもう突進してきた。
「あー、これ?ドラマ見返してたら感動しておもわずさ~」
って、こんな見え見えの嘘陽菜に通じるはずもなく…
「あーちゃん、何か私に…」
キーンコーンカーンコーン
「ほらほら、ひーちゃん席戻って?担任来ちゃうよ。」
「でも…」
『起立、礼、お願いします。」
どんな時でも真面目に前を向いている陽菜が何度も私を見る。
心配させたくないから何か言ってごまかしたいのに、言い訳が見つからない。
きっとまたあんな見え透いた嘘をつけば陽菜はさらに心配してくれるだろう。
けれど、自分でもまだ昨日の出来事や私の感情を理解できていないのに上手く説明できるわけがない。
とりあえず…
「あーちゃん、1限の自習何する?」
「私、今日あれだから保健室で寝てくる。」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫、そんなにきつくないから一人で行ってくる。」
「ありがとう。」
今はこんな嘘しか思いつかなかった。ごめんね…
「そっか!なら、後で迎え行くね。いってらっしゃい。」
「月が綺麗ですね」って言いたい?言われたい? 浅葱ヒカリ @asagihikari
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