死に際

 自分はろくな死に方をしないだろう、という確信めいた思いが胸中の深いところに根差している。それが一体いつ頃からなのか見当もつかない。とにかく私にとって当たり前のようにそこにあって、消えてなくなりそうにもないのだ。百何歳まで生き、自分の子や孫に囲まれて大往生なんてまるで絵空事である。独居老人となり何かの拍子に死んだが安否を確認するものもなく、数日後になって隣人の通報によって発覚。こちらの方がリアルに想像できる。若しくは酔っぱらって階段から転倒、そして意識不明というのも私らしいのではないだろうか。或いは駅のホームで通り魔的に背中を押され、特急電車と派手に衝突して死亡。これも十分に有り得る話だ。こんなことを考えているため、駅のホームでは常に警戒している。まだ死にたくはない。

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