訪問者

 自宅は人の世に於いて唯一心安らげる場所であるが、それを邪魔しようという不逞の輩が残念ながら少なくない。訪問者である。断っておくが私に家を訪ねてくるような友人は居ない。インターホンを鳴らす者、扉を叩く者の全てが敵である。

 一人暮らしを始めて一年目の頃は馬鹿正直に応対していた。二年目になると息を潜めて立ち去るのを待つようになった。そして今では音楽や生活音を止めることもしなくなり、完全に無視することに成功している。そもそも彼等は何故来るのか。考えれば簡単なことである。何かしら得するからである。彼等が得をするということは私が損をするということに相違ない。不要なサービスを売りつけ小銭を得たいが為に何度でもやってくるのだ。そのような不届き者に礼儀は必要ない。

 インターホンやノックの音も気に障って仕方がない。何らかの仕組みで触った人が死なない程度の重傷を負うように出来ないものだろうか。

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