春の訪れ

 二十度を超えているそうなので薄手の上着を一枚だけ羽織って映画を見に行ったのだが、帰る頃には少し汗が滲んでいた。それでも二三日後はまた冷えるようなので衣替えはまだ先のようである。

 汐入公園で桜を見てから一年経つわけだが、何か私は変わっただろうか。

 変わったことと言えば相変わらず金には困っているが何とか算段がつきそうだとということと、知り合いが何人か出来た、それぐらいだろうか。

 変わらないことの方が多い。今の家から引っ越したいと数年前から思っている。生活方式もまるで変わっていない。他にも変わらないことが幾つもあるが、別段面白い話でも何でもないので省略する。

 とにかく春が来たのだ。人々は出会い、別れ、進学し、就職する。そのどれも億劫な私には憂鬱な季節である。寒い季節に身を隠して生きていたいだけなのに。

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