雨の一幕

 一週間ぶりの雨が降っている。何の予定もなく部屋から見ている分には気楽なものだ。私は窓を開けて雨戸の隙間から外を眺めたのだが、何百回と見た面白くもない風景が雨によって幾分かマシになっていた。湿ったアスファルトの匂いが漂っている。私は数分の間ぼうっと立っていたのだが、体が冷えてしまってはいけないので窓を閉めることにした。するとどうだろう。窓と雨戸の間に一匹の虫が居るではないか。「雨宿りかい」と聞くが返事はなく、代わりに窓に己の体を打ち付けている。所詮は虫けらである。まあまあ、そうしている分には許そうではないか。部屋に入ってきたら即座に息の根を止める。

 それにしても今夜は寝つけない。酒を一杯飲んでおくことにする。

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