物言わぬペット
地元を離れて一人暮らしを始めてもう五年目になる。相変わらず友人は出来ていない。それはそれで快適であるし、何だか世捨て人の様で格好良くもあるからもうこれで良いような気がしてくるが、それでもなんというか私も仙人ではないのだから寂寥感みたいなものに苛まれたりもする。人付き合いは面倒であるから、いっそペットでも飼おうと思うこともあるが、ただでさえ怠惰な生活をしている私が他の生き物の面倒まで見られるとは思わない。犬や猫は言うまでもなく世話が掛かるし、ならば植物でも育てるかと考えるが、家を空けることが多いから、それも上手くいかないだろう。大体、植物では孤独は埋まらない。
私は余り動物が好きではない、と言う風に見られる。友人も作らず四六時中一人で居て仏頂面をしているから、そういう誤解をされるのだろう。人も動物にすぎないということであろうか。確かに、何の病気を持っているか分からない野良猫を愛でる気にはならないし、飼い主にすらきゃんきゃんと吠える馬鹿犬を見て何が悲しくてあんなのを食わせてやっているのかと思うこともあるが、それは私に限ったことじゃないだろう。
余談ではあるが、最近、手慰みに鶴を折った。習ったのが十年ぐらい前であるから、どこか間違えたのだろう、何だか不細工な鶴になった。そこが却って味になっていて、見れば見るほど愛着が湧いてくる。友人に名付けを頼んでみたら「金鳥」と返ってきて、これもなかなか味がある。今、金鳥は机の隅に鎮座している。鳴きもしないし、体温も無いが、取り敢えず世話は要らない。偶に手に乗せてみたりしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます