終章

終章

新富士駅。バス乗り場で、バスを待っている杉三たち。

杉三「お別れだ。お別れは寂しいけど、出発でもあるからな。」

広一「本当に、ありがとうございました。最後にドイツまで行かせてくれるなんて、お礼のしようがありません。」

懍「いいんですよ。ドイツで、体を大切に、ゆっくり過ごしてください。」

水穂「禅を求めて、ああいうところに来る人たちは、みんな傷ついたり、悩んだりしている人ですから、悪い人はいませんよ。」

杉三「本当は、僕も一緒にいきたかったな。」

蘭「馬鹿。杉ちゃんが成田まで行ってどうするんだ。」

杉三「ごめん。」

蘭「本当に、杉ちゃんは、口を慎め。」

杉三「いいってことよ。まあ、ドイツは、こっちに比べたら、気ぜわしいこともないし、気候だってのんびりしてるし、何よりも、自分と他人の線引きがしっかりしているから、大丈夫でしょう。」

水穂「個人主義ですからね。」

杉三「そうそう、個人主義!本当は、日本でもそうなってくれればいいんだけど、そうはいかないからなあ。」

水穂「まあ、永久にないでしょうね。そうなることは。」

広一「でも、本当にありがとうございます。僕みたいなのを助けてくれて、よくしてくれて、安中さんとのことまで取り合ってくれて。」

杉三「そうそう。必ず、安中さんを、迎えに行ってやってくれよ。彼女は、きっと、重たいレッテルを背負って生きていくだろうからね。だから、君が支えてあげてね。そんな義務が将来待ってるんだから、人生終わりだと言ってはいけないよ。」

広一「はい、決して言いません。」

懍「そうそう、そのくらい、強い男になってくださいね。」

庵主様「さあ、もうすぐ、成田行きのバスが来ますよ。体調は大丈夫ですか?これからの事を思って、ゆっくり行きましょうね。」

広一「はい、よろしくお願いします。」

杉三「頑張れよう!」

水穂「あ、バスが来た。」

正面から大型バスが近づいてきて、杉三たちの前で止まった。

蘭「かぐや姫の空飛ぶ車みたいだな。」

杉三「いや、何れは地上へ帰ってくるさ。昇天するわけじゃないもん。」

広一「どうもありがとうございました!」

と、庵主様と、二人でバスに乗り込んでいった。



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杉三中編 想夫恋 増田朋美 @masubuchi4996

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