未完の物語を完結させることでその無念を晴らす主人公と、その相棒の鬼の「戦い」の物語。
――そう、この物語はバトルだ。
未完の物語との。
作者同士の。
そして、物語を記そうとする作者と、書き遺されようとする「事象」との。
恨みを伴う「未完の物語」は時に、現実に生きる人々を害そうとする。
それはフィクションの出来事ではなく、現実に起こりうる人の心の動きのメタファーとして、一種の恐ろしさを感じさせる。
それとどう向き合い、どう決着をつけるか…キャラクターがそこに挑むプロセスは非常に新鮮で、そして説得力を感じるもの。
そして勝機を掴み、逆転するその瞬間のカタルシスは、書き手が暗中模索の中から「これだ!」と物語の本質を掴むそれ。
いやーもう、その瞬間の気持ちよさったら。
この気持ち良さは、ぜひ読んで体験して欲しいものです。
スリリングで爽快で、そしてその中に一抹の真実を感じさせる、上質のエンターテイメントでした!