作品タイトルを見た最初、ラブコメとは思わなかった。ジャンルも現代ドラマだし、こんなに軽妙なテンポで進むとは全くの想定外。
でも、ラブコメに分類しなかった作者の矜持も同時に感じる。ブラック企業だの、シャッター街だの、個人商店の奮戦だの、世相を切り取っているのは事実。それが前面にでしゃばらず、良い塩梅で背景設定に収まっている。そのバランスが作品に奥行を与えている。ドラマ化に耐え得ると評価した所以です。
読み易い文章で、キャラ設定も巧い。一つだけ難癖を付けるとしたら、15万字くらいまで書き込んで欲しかった。何だか急遽放映中止が決まって、バタバタと幕引きしたような印象を受けました。それだけ「もっと読みたい」と思わせる作品です。
試しに「女優、才媛」でYahoo検索すると、ヒットした方が山口紗弥加さん。ヒロイン芳乃さんには合わないかな。もっと繊細で理知的な雰囲気の濃厚な方が望ましい。そんなヒロインを取り巻くラブコメです。
良かった点
主人公とヒロインが出会って絆を深めていく過程のエピソードから山場がきちんと有り構成が良かった。
文章も読みやすく、クドさを感じさせないのも個人的に好感が持てた。
悪かった点
あくまで私の感じた点ではあるが、全体的に薄さを感じた。それはキャラクターであったりエピソードであったりもう少し登場人物を少なくしてキャラクターたちのバックボーンを掘り下げたりして物語に厚みを増すこともできたのではないかと思う。
期待?願望?
これも私個人の意見だがもう少しザマァ感が欲しかった。物語終盤に気持ちよく終わらせようと爽やかに終わらせたがために印象が薄くなってしまったような気もする。
または、山場のシーンをもっとドラマチックに演出するなどしてこの作品の最高潮にもっていく形にすればもっと印象に残ったかなと言う感じがした。