私たちは常に他者と関わって生きる。その他者がどのような人生を送るのかを、常に想像する。その想像が合っているかいないかに関わらず、私たちは他者の「見た目」から惹起される他者の人生を創造するしかない。創造するたびに世界は分岐する。しかしその人の人生は一つの真実しかない。
マルチエンディングゆえの一つの結果に終わらないストーリーの豊かさに感銘を受けました。台詞回しも日常に近い風なものばかりで、本当に日常のひとかけらを切り取ったかのような印象を受け、物語に素直に没入出来ると思いました。
読んでいると『あれ? これは自分の話?』と錯覚してしまう部分も。美人な妻はいないけれど(笑そして、マルチに展開される話も絶妙。少年は、何を待っているのか。展開される話の情感が秀逸。その温度まで感じられそうな程。できれば、彼が紡ぐ少年の物語をもっと読みたいと思ったぐらい。そして、自分もそんな話が書ければと思わされる秀作です。