第12話 不受理申請

「これ、離婚届け。ここに名前書いて。私はもう書いたから。それじゃ」


 ドラマでそんな場面を観た人も多いだろう。

 つまりこれは、協議離婚というやつだ。

 離婚届を書いて役所に提出すれば、本気で一瞬にして離婚は成立する。

 子どもがなくて財産も分与完了しているならこれでいいと思う。でも、できたら離婚前に法的に意味を持つ書類を作成してからをお勧めする。

 離婚してからだと何もできなくなる。またはやっぱり調停の申し立てをしなければならない。

 

 空いてしまった一ヶ月、何をしていたかというと――。

 

 離婚届不受理申請をしていた。

 知らない人の方が多いこれ、相手に離婚届を勝手に出されていつのまにか離婚していました、を防ぐ申請だ。

 

 離婚届も婚姻届も役所に行けばすぐもらえる。(うちの地域は夜間でもオッケー……そこがまた怖い)

 で、筆跡の違う二人と、それらを見届ける筆跡の違う二人が同意すれば離婚も結婚も簡単にできる。印鑑も受け取りのでオッケーだ。

 

 そう、筆跡が違えば……。

 

 家の中の片付けをしていると、婚姻届の下書きが見つかった。そういえばこんなのも……と思った時に、筆跡違えば誰が書いてもすぐに結婚できちゃうよな……なんて思って、はたと気づいた。

 

 義母がやりかねん!!

 義母はそういう事は手早くやってしまうので、慌てて調べた。

 すると出てきたのは、離婚届不受理申請であった。

 やっぱりあるらしい。勝手に離婚。ほんと怖い。

 

 相手の住所地区にある役所にある、各書類提出の場に言って伝えるとすぐくれた。で、その場で書いた。その場で提出した。住所や名前や印鑑を押す作業だけだった。

 これで私は離婚できない身分となったわけだが、調停で離婚が成立すれば、その方が効力は上なので不受理申請をしていても離婚は通る。協議離婚ができないというだけの防御力だ。

 ただ、離婚後もこれは解除しない限り継続する。

 再婚の際は解除してからにしてください、と言われた。

 

 これで一安心。

 七津の防御力が上がった!

 しかし、変な知識がどんどん身に付いていく。できれば知りたくない世界だった……。

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