第9話 第二回

 第一回目がトータル三十分くらいで終わってしまった後、次回はなんと一ヶ月後である。部屋が空いていないのと、調停員も他の作業があるのでどうしても一ヶ月後になるという。けれど、他県の裁判所もそうなので、一か月に一回ペースで行うものなのだろう。

 

 私は一回目の出来事を反芻し、ネットで検索しまくった。出てくるのは離婚するための極意だの親権を取るためだの、私が行なっている円満調停とは違ったし、そもそもこんな状態になった「理由」を聞くための調停取り決め項目はなかった。

 

 一体なんだというんだろう。

 

 そんなこんなで二回目。

 早く来すぎたのか、旦那を見かけてしまった。私はそれを速攻で伝えたら、その後時間をずらしたので会うことはなかった。それについては通りがよかった。

 

 同じ待合室で同じ時間。

 あの女性とにーちゃんはいなかった。代わりに、おばさん二人が何やらぶつぶつぼやいている。

 と、そこに、よれたスーツとぼさぼさの髪のおじさんがふらりとやって来ておばさん二人の隣に腰掛けてカバンから書類をどさりと出した。

「あーえっとねぇ、あちらさんなんだけど、だいぶ渋ってるようでねぇ。どうしても建てないといけないって言うんですわ。それがダメだっていうのがこっちの言い分で、建てればこうした障害があるって言ってもねぇ、中々通じなくて」

「まあ、酷い! 一方的すぎやしませんか! こっちは生活がかかってるんですよ!」

「大丈夫、大丈夫ですよ、奥さん。こちらはこの◯◯で〜◯◯して〜……こうしていきます。ま、がんばりましょ!」

「おー!!」

 十年くらい前に観た二時間ドラマみたいな様子で、おばちゃん二人は息巻いて、スーツ姿のおじさんは書類をめくった。

 どうやら、何かの建設トラブルを巡っての、これは裁判の方だろうか。(調停室の奥に裁判する場所がある)何にしてもがんばってください……。(結果は知らない)

 

 と、そこで、おばさんの佐藤さんがやってきた。前回と同じく息子を連れて階段を下がる。今度は別の部屋だっが、中は一緒だった。

 

 婚姻費用について。

 私が今まで払ったものを言いつつ、一応通帳を出す。見せたくないところは黒線で消していいのだが、特に隠す必要がないのでそのまま。

 いや、婚姻費用は正直どうでもいい。それよりも理由と今後の話し合いは?

 ネットに書いてあるままに婚姻費用分担を行なっているが、私にとって肝心なのは金よりもこの現状だ。

 まあとりあえず、私の希望はないので相手の給料から算出した金額にすると決まった。

 算出する際、山田さんが「担当の裁判官に聞いてみます」と言った。

 どうやら裏にボスがいるらしい。

 ボスこと裁判官についてはまた後日。

 

 旦那のターンが終了した。

 これまでクールだった、おじさんの山田さんが渋い顔をしていた。

 

「払いたくないそうです。いや、義務だって伝えたんですが、七津さんが金に卑しい、金のことばっかりだと言って聞いてくれないんですよ。いやでも、義務ですからね、普通に生じるものなんです。卑しいとかなんとかはないんですよ。相手さんはとにかく、金がないから嫌だと……」


 はあ。

 確かに、旦那に金はない。というのも、保険料が異常に高いからだ。これを見直せばいいのだが、義父が怒るので変更できなかった。

 で、さらには。

 

「保険の名義を変更したいので書類を返して欲しいそうです」


 保険は生命保険で、旦那が死亡すると奥さんに入るあれである。それの名義をうちの息子に……? と、思ったら大間違い!

 

 その夜、義母からメールが来た。

 お前は金の事しか考えていない最悪の女だ。うちの息子のことを何も考えていない。保険を使われたくないので返してもらう。名義は私たちの名前にする。

 私は返事をした。

 責任くらい少しは持ってほしいと、息子は御宅の息子の子でもありますよ、とそんな事を返した。

 すると、

「孫はたくさんいるからいらない。息子の子もいるから別にいい。そんなことはどうでもいいでしょう」

 うちの子はネズミかなんかか!?

 

 そして保険。使うも何も、旦那が死んだら入る金である。義父母は保険金殺人狙ってるのかな?

 

 なんだかよくわからないまま、二回目は終わった。

 婚姻費用分担はいらなかったなと深く反省した。けど、通常は義務ですから……相手がヒモでない限り……。

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